・・・「版画伍人展」のメンバーは、愛知県・三重県在住の版種を超えた版画家たちの集まりです。
各種版画の普及と発展及び技術の向上など互いに切磋琢磨を図るグループです。
第62回は、下記のごとく開催中です。版画各種、木版・銅板・シルクスクリーンをお楽しみいただければ幸いです。
第62回 版画伍人展(2022/5/24~5/29)
愛知県美術館 8FギャラリーJ2室
第62回、出品作品紹介。
杉藤 万里子(シルクスクリーン)。
・・・”透明水彩”によるシルク・スクリーンで、透明水彩が持つ特有の重ねによる効果をいかんなく発揮する作品が特徴です。
<小作品>
鈴木 正仁(銅版画)。
・・・銅板モノタイプの作品を基本に、グラデーションとホワイトガソリンを巧みに使った白を組み合わせた作品が特徴。今後も表現の多様性を感じる新メンバーです。
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写真:Voice Ⅱ。
<小作品>
羽多野 豊子(木版画)
・・・夜空に上がる花火が大好き。全国(長岡・熊野など)の花火大会を楽しむ。透明水彩作品からパワーを感じます。
夢ひと夜ー4。
<小作品>
藤﨑 増男(木版画)。
・・・築地塀の持つ層をモチーフとする作品が特徴。単純な層の積み重ねと、その変化の組み合わせにモダンを感じます。
写真:連22ー1。
<小作品>
吉川 房子(木版画)。
・・・透明水彩の良さを引き出す明るい色調の作品が特徴は、多くのファンを魅了します。中部地区にある複数の木版教室で講師として活躍中。
写真:’22 苑ー1。
<小作品>
米倉 泰臣(シルクスクリーン)。
・・・油性によるシルクス・クリーンで、グラデーションと細い平行線を多用した作品に特徴。
小作品は宝石のように美しく、大きな作品は様々な形と想像力に毎回驚きます。
写真:呪 文。
<小作品>
鈴木孝太朗(遺作)・銅版画。
・・・中部地区の銅板画会の重鎮。銅板画普及のリーダーとして大いなる活躍が期待されていました。
<近年の作品>
<1998年、春陽会受賞時の作品>
・・・第61回「版画伍人展」は、愛知県美術館にて6/23~6/27開催されました。
第61回「版画伍人展」は、メンバー代表者鈴木孝太朗氏の訃報にショックを受けての飾りつけでした(搬入日の前日に逝去)。
「版画伍人展」の創立及び概要。
第1回(1961年)創立メンバー:岩田覚太郎・木下富雄・佐藤 宏・鈴木幹二・佃 政道の5名で「版画五人展」を愛知県美術館で開催。
第27回(1987年)「版画伍人展」に改称、参加メンバー:石田智子・小林常晃・坂本久康・佐藤宏・鈴木幹二・須田敏夫・成田光二・根本啓・判冶枝江子・山田光二の10名
第50回「版画伍人展」2010年、寄稿。
・・・1961年5月、当時の愛知県美術館にて5名の版画家が集まって第一回のグループ展を開いた。
「版画伍人展」として誕生した。あれから半世紀、その間幾多の変遷を得て今年2010年代50回展を迎えることになった。
今その功績を称えながら、記録をたどってみたい。
創立メンバーは、(以下敬称略)岩田覚太郎・木下富雄・佐藤 宏・鈴木幹二・佃政道の5名で、年一回5月ごろに開催する。
会場は旧愛知県美術館一階の広い展示室で、一人10点ぐらいの出品で各作家の個性を発表するのには十分といえる空間であった。
第5回展で木下富雄と佐藤暢男が交代木版に銅版が加わることになった。
また会場では会員による手摺りオリジナル版画集を100部限定で発行し、予約の行列ができたほどの人気であった。
21集まで続いた。これはのちに美術館の規約が変わり、中止となったが、今でもギャラリーや古書店に出ることもあるという。
また作家の思いを掲載した小冊子を配り、来館者と作家のより親密な関係を作っていた。
第15回展の小冊子には鈴木幹二が”伍人展の15年”の文を寄せている。
「版画伍人展」も15回を迎える。世間並みには記念展というところだが、格別の企画も出来なかった。
でも15年、よくここまで来たという感慨はある。(中略)朝日新聞の角田守男さんは、はじめから五人展を温かく見守ってくださったお一人だが、
第7回の批評に次のように書いていた。「会員の一人が今年は七回忌ですよと笑っていた。
それほど、このグループは和やかである。最初から気負った旗上げをしたのではないので自然に新しい季節が訪れたように、今年もまた展覧会がやってきた。
そしていつものように鮮度が失われず玉たれている。版画五人展はそんな感じである。
この5人が互いに影響されず、また反発もしあわず、不思議な均衡を保ってグループが維持されている。」
五人展の空気を実によく感じとっていて下さると思う。
それぞれ適当に頑固なのだけれど、むきになることは嫌いなのだ。
少々引用が長くなったが、初期の五人展をよく語っている。そんな伝統は今も受け継がれている。
回数を重ねて、会員の入れ替えも次第に移動し始めた。1987年、第27回展では、人数も増えて五人展の名称がそぐわなくなった。
いろいろな提案もあったが、結局伍人展の名称になった。つまり伍の字は仲間を意味する名称で、これからも変わらず続けていきたい証とした。
2000年、第40回記念展を迎えたパンフレットには、かって五人展をなつかしく思う記事もあった。
再び鈴木幹二の言葉を引用する。「佐藤さんは、会場で見かけない日はないほどの精勤ぶりだったが、脳卒中で倒れ、今だに話も通じ合え」ぬようなことになっている。
まことに時の流れは厳しい。あの四角へや(旧愛知県美術館の会場)に詰まっている想い出も、だんだん薄れてゆくのであろうか。」
その頃、すでに佐藤暢男も私と交代する形で会を退いていた。
1998年には版画伍人展に対して、平成9年度愛知県芸術文化選奨・文化賞を受賞した。長年の地道な活動が認められた。
振り返れば50年、鈴木観幹二の言葉「時の流れは厳しい」が、亡くなられた先輩の意思をつぐように、現在6名の会員で、第50回展を迎えることになった。
これからも益々充実した版画伍人展を盛り立てていくことを誓いながら。(日本版画協会会報原稿を加修正して、須田記)。
平成9年度「版画伍人展」の作者紹介
・・・平成9年度は、グループ展において「愛知県芸術文化選奨文化賞」を受賞しました。
メンバー、小原喜夫・坂本久康・佐藤 宏・鈴木幹二・鈴木孝太朗・須田敏夫・判治佐江子・成田光二・吉川房子・岩田覚太郎・木下富雄・佐藤暢男・佃 政道。
第61回「版画伍人展」版種別 作品紹介
木版
羽多野豊子(国画会)
夜空に上がる花火が大好き。全国(長岡・熊野など)の花火大会を楽しむ。透明水彩作品からパワーを感じます。
写真:夢一夜 シリーズ
藤﨑増男(国画会)
築地塀の持つ層をモチーフとする作品が特徴。単純な層の積み重ねと、その変化の組み合わせを楽しみます。
<同日展示の小作品3点>
吉川房子(国画会)
第33回「版画伍人展」に鈴木孝太朗氏と加入。透明水彩の良さを引き出す明るい色調の作品が特徴。
作中の古来の形にDNAが反応、多くのファンを魅了します。中部地区にある複数の木版教室で講師として活躍中。
エッチング
鈴木孝太朗(春陽会)
第33回「版画伍人展」に吉川房子氏と加入。銅版画家としてN・ASKAシリーズは有名。
これからの銅板画普及のリーダーとして大いなる活躍が期待されていました。
シルク・スクリーン
杉藤万里子(春陽会)
”透明水彩”シルク・スクリーンで、透明水彩が持つ特有の重ねによる効果をいかんなく発揮する作品が最大の特徴です。NHK名古屋文化センター講師。
NHK(名古屋)文化センター、シルクスクリーン教室 講師 第2・第4の土曜日、PM3:30~5:30、定員8名限定
米倉泰民(国画会)
油性によるシルクス・クリーンで、グラデーションと細い平行線を多用した作品に特徴。
小作品は宝石のように美しく、大きな作品は様々な形と想像力に毎回驚きます。
搬入作業(6/22日)
鈴木孝太朗氏の奥様が、搬入時に遺作となった作品を車でお届けにいらっしゃいました(中日新聞朝刊、2021/6/24)。
写真:第61回「版画伍人展」鈴木孝太朗氏急逝を伝える新聞
搬入時にメンバー代表者鈴木孝太朗氏の訃報を知り、ショックを受けての飾りつけでした(搬入日の前日に逝去)。
奥様は、鈴木孝太朗氏の逝去にもかかわらず、作品をお届けてくださいました。
その気丈なお姿に、胸を締め付けられる思いでした。鈴木孝太朗氏の逝去を知り、多くの版画家・知人・友人・職場の関係者など来場くださいました。
鈴木孝太朗氏の作品特色と「ナスカの地上絵」
鈴木孝太朗氏の作品の特色
鈴木孝太朗氏の作品は、「ナスカの地上絵と日本古来の文様を融合」させた独創的な銅版画作品でした。
その素晴らしい銅版画作品を、30年来絶えることなく出品続けられた銅版画作家として貴重な最古参でした。
これから銅版画をもっと普及させるべく、将来の普及活動を計画されておりました。
銅版画家として益々の活躍が期待される貴重な存在でした。志半ばでの急逝は残念でなりません。
今回の「版画伍人展」で再び、「古代の世界に引きずり込まれ、独特の余韻に浸る」鈴木孝太朗氏の作品を堪能いただければ幸いです。
2021年12月7日から12日に開催された「中部春陽展」に鈴木孝太朗氏の遺作2点が展示されました。 関連記事「国展」・「春陽展」ご参照ください。
ナスカの地上絵、参考記事。
ナスカの地上絵を鳥類学の観点から分析
ご存じ南米ペルーの世界遺産「ナスカの地上絵」に描かれた鳥の絵16点ありますが、うち3点がナスカ周辺にいない鳥だったことが判明しました。
北海道大総合博物館などの研究グループが、鳥類学の観点から分析した上記の結果を記事にしました。(2019/6/22 中日新聞)。
その3点は、いずれもナスカ周辺には生息しない、ペリカン類2点とカギハシハチドリ類1点と確認したと発表しました。
一方、コンドルやフラミンゴとされる有名な地上絵は、各分類の特徴に当てはまらず、それらの鳥ではないと結論付けました。
他の13点は、鳥類学の観点から分析したら、どの鳥を描いたかは不明という結論でした。
ナスカ周辺の民話
うみどりが、海から運んだ水を山に落とし、水が川を流れてナスカ台地に至るとの民話がナスカ周辺にあります。
うみどりのペリカンを描いたのは、雨乞いが目的だった可能性があるのではないか。と、推測されます。
ナスカの地上絵の鳥と同時期に描かれた鳥の比較
地上絵と同時期に作られた彩色土器に描かれた鳥や、近くのカウチ神殿遺跡の宗教儀式で捧げられた鳥類を比較したいと抱負を語りました。
そして、”残る13点の特定を進め、なぜ描かれたのかも調べたい”と、北大江田真毅 准教授が述べました。
鈴木孝太朗氏の作品は、「ナスカの地上絵と日本古来の文様を融合」させた独創的な銅版画作品でした。
作品のモチーフである「ナスカの地上絵」についての新聞記事を掲載しました。ご参考になれば幸いです。
第60回【版画伍人集】の作品紹介。
「版画伍人展」のメンバーで作成される【版画伍人集】の作品は、10年ごとに作成されます。
昨年は新型コロナの蔓延により、第60回開催は、愛知県美術館ではなく急遽、大黒屋画廊での開催となりました。
今年は多くの関係者から、第60回【版画伍人集】の作品を展示してほしい旨のお声があり、結果的に昨年と今年の2回の展示となりました。
第60回【版画伍人集】一組6枚シート、の作品を紹介します(五十音順)。
杉藤万里子(春陽会)種になる:シルクスクリーン・10×10cm。
鈴木孝太朗(春陽会)NASUKA-S201:エッチング・11×15cm。
羽多野豊子(国画会)ゆめかよひじ:木版・13×18cm。
藤﨑増男(国画会)層20-1:木版・12×20cm。
吉川房子(国画会)私的な-6:木版・15×10cm。
米倉泰民(国画会)KT7089A:シルクスクリーン・19×19cm。
【版画伍人集】の作品シート・ケース作成。
・・・タイトル表紙・内容目録、大判のケント紙カット、折り畳み梱包に至るまですべてメンバーによる手作りです。
今回、第60回【版画伍人集】の作品シート・ケースは、吉川先生のお宅の広間にお邪魔し、メンバーが半日かけての作業でした。
過去、版画伍人展の先生たちも同様に「手分けしながら協力し、作り上げていったのだ」、と感じながら作業をしました。
鈴木孝太朗 遺作展(2022/6/23~6/28)
遺作展ご案内
多くのファンを持つ鈴木孝太朗氏の遺作展の開催が決まり、うれしい限りです。
再び同氏の世界に出会えることを楽しみにしています。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
その他、同日開催「Nの会」展示作品の一部紹介
・・・「版画伍人展」と同日に「Nの会」の展示会が、開催されました。
同グループは、NHK(名古屋)文化センターの木版教室で木版画を学ぶ仲間たちです。
講師は「版画伍人展」メンバーの吉川房子氏です。
講師 吉川房子(国画会)
前講師 沼田豊彦(国画会)
真田芳子(国画会)
鈴木洋子(国画会)
野村龍也(水彩協会)
緒方 隆(水彩協会)
以上、第30回「Nの会」木版画展の展示作品の一部です。出品者は、NHK(名古屋)芸術文化センターの現講師・前講師及び受講生の面々です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。作品発表の一助となれば幸いです。今後とも宜しくお願いします。