アート

木版画歴50年、初心者からベテランまで経験する創造する悩み。一発解決!「マット枠トリミング法」を公開

 

木版画に限らず初心者からベテランまで、新しい作品の創作は作家にとって避けて通れない宿命ですね。

それゆえ試行錯誤の上に納得した作品が出来上がった時充実感と喜びは、何物にも代えがたく、木版画の作家は20年から30年と長く続ける方が多いですね。

この創作活動の中で「マット枠トリミング法」を活用すると、作家の持っている潜在能力がひきだされ、作品の創作・展開が驚くほど楽に簡単にできます。

今回、日本を代表する花”サクラの作品”を使用して「マット枠トリミング法」の展開方法を解説します。

さらに「完成作品、進化法」そして「小作品と効率的な版木の面取り」へと進みます。参考になれば幸いです。

Contents
  1. 「マット枠トリミング法」の作業のすすめ方(5段階)
  2. 「マット枠トリミング法」の優れた根拠3点
  3. 持続可能な創作活動に必要な、作品の創造力を保つ工夫5点
  4. 作品作り困った時、「マット枠トリミング法」の活用のおすすめ理由3点
  5. 「完成作品、進化法」3例
  6. マットトリミング法・完成作品、進化法のまとめ。
  7. 番外編、小作品と効率的な版木の面取り方法。

「マット枠トリミング法」の作業のすすめ方(5段階)

1、長方形・正方形のマット枠(はがき大から四つくらいのサイズ)任意に用意する。

写真:長方形のマット枠(たくさんサイズを用意する)

 

 

 

写真:正方形のマットとハガキサイズマット

 

2、今回は、すでに創作した作品をコピーした後「マット枠トリミング法」の活用で、再度新しい作品を検討し作成する。

写真:左は創作した作品のコピー、右はマット枠

 

3、創作作品のコピー、上・下・左・右・中央など全体をトリミングする。

写真:作品下部を横マットでトリミング

 

4、様ざまなポジションで「マット枠トリミング法」を活用し新作を検討する。

写真:作品上部を縦枠マットでトリミング

 

写真:作品下部を縦マットでトリミング

 

5、「マット枠トリミング法」で新たに制作した作品を修正する。

写真:横サイズの新作品2つ(上、左上部に築地塀を表現)
写真:縦サイズの新作品2つ(左右、左側に築地塀を表現)

 

「マット枠トリミング法」の優れた根拠3点

1.新しい気づきの発見

「マット枠トリミング法」は、従来の固定観念にない新しい構図の気づき・新しい角度からの組み合わせなどを、作家本人が自らが発見できます。

作家本人の脳内記憶の中でのイメージ作業であり、盗用・真似ではなく、立派な個性を発揮した創造作品の出来上がりです。

2.潜在能力の発見

「マット枠トリミング法」は、多人数の意見などを介さず、作家自身の潜在能力を引き出す方法であり、簡易にして優れた創作活動を助けるツールです。

3.長い作家活動における挫折の克服

作家は、自身が独自に開発した渾身の構図・技法を伴う作品でも、長い作家活動のある日、過去に同じような作品を発表した作家の存在を知り、愕然とすることがあります。

しかしその時も、さらに「マット枠トリミング法」を信じて活用することが、解決の糸口を与えてくれます。

持続可能な創作活動に必要な、作品の創造力を保つ工夫5点

  1. 創作活動に困ったら、自分の過去の作品を「マット枠トリミング法」を活用し新しい作品の創造を試みる。
  2. ジャンルを問わずあらゆるメディアから「マット枠トリミング法」をあてはめ、作品作りの参考にならないか検討する。
  3. 苦労して創作した作品のすぐ後に、さらに全く別の新作にチャレンジする活動は、創作エネルギーが一段と必要であり、長続きしないので避ける
  4. 一つの作品を創作したら、その作品から「マット枠トリミング法」でさらに発展させた新しい作品を作る。
  5. できるだけ多くの作品を鑑賞し、「マット枠トリミング法」を活用する目線で自分流の作品の創作をイメージする。

作品作り困った時、「マット枠トリミング法」の活用のおすすめ理由3点

1、作品作りの苦しみと困難を軽減

作品作りは決して楽ではありませんよね。それゆえ、作品を創造し完成した時は、本当に充実感と喜びを感じます。

「マット枠トリミング法」の活用は試行錯誤の中での作業軽減に大いに役立ちます。

2、作品作りに困った時

思い切り視点を変えて、自分の過去の作品に「マット枠トリミング法」を活用してください。

意外と多くの気づきとヒントが見つかり、その時に作家自身の潜在的な個性が磨かれます。

3、「マット枠トリミング法」の活用

「マット枠トリミング法」により、最も困難である作品の創作活動が軽減されます。その事で、木版画の作家にとってより持続可能な活動が広がります。

今回の題材は、日本を代表する花”サクラ”の作品を取り上げました。

一つの完成した作品をもとに、それをさらにいくつかの作品を作り出す「マット枠トリミング法」を紹介しました。創作活動の参考になれば幸いです。

 

「完成作品、進化法」3例

ここまで読んでいただいたあなたに感謝を込め、現在トリミング法の次に、「完成作品、進化法」を記載します。

作品例1、2021/6:伍人展出品作「刻ー1」

写真:刻ー1<木版>24cm×15cm

 

  • 完成作品、進化法で、左上部に白の三角形を挿入します。
  • 白抜きで、さらに奥行感を出します。

 

写真:「完成作品、進化法」後の作品「刻ー4」<木版>24cm×15cm

作品例2、2021/6:伍人展出品作「刻ー2」

 

写真:刻ー2<木版>21㎝×16㎝
  • 「完成作品、進化法」で、下部に黒の平行線を挿入し、背景を白抜きにします。
  • 後方の層を二層から三層に増やし、より奥行感を出します。
写真:「完成作品、進化法」後の作品「刻ー5」<木版>24.5cm×16cm

 

作品例3、2021/6:伍人展出品作「刻ー3」

 

写真:刻ー3<木版>24cm×15cm
  • 「完成作品、進化法」で、上下部を黒、中央背景を白抜きします。
  • 中央部のコントラストを強め、奥行き感を出します。

 

写真:「完成作品、進化法」後の作品「刻ー6」<木版>24cm×15cm

 

写真:小作品3点を水張り中。

今回、2021/6に開催しました、版画伍人展」の作品3点を、「完成作品、進化法」で新しい作品を生みだすことが出来ました。

上記3点の作品は、名古屋市民ギャラリー火曜会木版画展(11/16~11/21)に展示予定です。ご高覧頂ければ幸いです。

 

いかがだったでしょうか?新しい作品を生み出すことは、現代版画(創作版画)を続けるうえで避けて通れない道ですよね。

マットトリミング法・完成作品、進化法のまとめ。

生み出す苦しさはありますが、アイデアが浮かんだ時の喜びがそれを勝りますね。

だから版画仲間は、皆さんが驚くほど長年継続できるのでしょうね(笑)。

  • 一生懸命だと、知恵が出る。
  • 中途半端だと、愚痴が出る。
  • いい加減だと、言い訳が出る。

困った時はいつも思いだします「武田信玄」の言葉です。あなたの創作活動の一助となれば幸いです。

 

 

番外編、小作品と効率的な版木の面取り方法。

木版画で年賀状や暑中見舞いなど、小作品を版木で面取りする場合、効率的な面取り法を説明します。

作品には版画用のベニヤがおすすめ

年賀状や暑中見舞いなど、小作品のベニヤには版画用ベニヤがおすすめです。

ベニヤの材質

市販のベニヤは、はぎ合わせや節目の部分があります。又、品質が一定ではありません。

版画用ベニヤは、シナ材を使用しておりやわらかく彫り安い。はぎ合わせ面がなく品質も一定です。

ベニヤの厚さ

版木の厚さは通2mm~15mmがあります。実情は、ベニヤの裏表を使用できる4mmか6mmが良く使用されています。

片面だけなら2mmか3mmでも構わないと思いますが、再び摺りたいとき、長期間のうちにそりが入り摺りにくい欠点があります。

無垢材は、現在では資源的限りがあり、しかも高価なので、ベニヤの存在が現代版画の発展・普及に大いに貢献しています。

版木の入手は、通販(有)ウッドライクマツムラを参照ください。最近世界的に木材需要が高く6ミリ板が不足がちです。

無垢材

浮世絵の版木などは山桜の無垢材を使い彫られており、当時でも貴重なものでした。

よって作品ごとに完成し、その作品が摺り終わったら次の作品のため無垢材にカンナをかけていました。

したがって、当時の作品を彫ったままの無垢材はほとんど残っておらず、たまに見つかるとニュースになるくらいです。

効率的な版木の面取り

先ず多くの版画の手引書に解説のある、非効率な面取りを説明します。

非効率な面取り

ハガキの周り四方向に、作品に付ける絵具を避けるための2~4cmのスペースを彫る必要があります。

写真:左・右(ハガキの周り四方向に溝を彫る必要があります)。

効率的な面取り、例1(版木13㎝×18㎝)。

ベニヤの角を利用し、二方向の溝を彫るだけでよい。

写真:左(かぎ見当・右下)、右(かぎ見当・左下)。

 

効率的な面取り、例2(版木は長方形18㎝×23㎝)。

写真:左(かぎ見当・右下)、右(かぎ見当・左下)

 

効率的な面取り、例3(版木は正方形:28㎝×28㎝)。

写真左(ハガキ4面×裏表)、右(ハガキ4面×裏表)

 

効率的な理由

版木の中のかぎ見当と、ベニヤの縁を利用した引きつけ見当で、下記効果があります。

  1. はがきの周囲の溝(2㎝~4㎝)の面積が節約できる。
  2. 版木の中のかぎ見当と、ベニヤの縁を利用した引きつけ見当で位置が一定しており、安定した摺りの作業ができる。
  3. 版画教室の先生などは200枚~400枚摺るケースもあり、②の安定した摺の作業は、ストレス軽減の一助となります。

ハガキはする前に湿らせる必要があるか。

木版画の手引書の多くは「ハガキは摺の作業をする前に湿らせるとよい」とのアドバイスがあります。

20年以上前、版画教室に通い始めたころ、電話帳や週刊誌に挟んで湿らせた経験があります。

現在思うに、ハガキは湿らす効果はないと思っています。むしろ余分な作業はやらない方が良いと思っています。

その他、ネット情報。

小作品(年賀状・暑中見舞い・蔵書票)など、毎年デザインを考えるのは大変だと思います。

通販(有)ウッドライクマツムラは、社長自ら年賀状作品を発行し、お客様の了解を得て、サイトで見れるようにしています。参考になれば幸いです。