・・・木版画教室に通って20年、仲間とともに木版画づくりを楽しんでいます。
現在、来る「火耀会木版画展」に向け共通課題作品として「紅葉」にトライしています。
課題作品「紅葉」の制作工程で参考になることがあれば幸いです。
木版画教室、「紅葉-1」ヒント・制作過程
・・・築地塀を背景とした、「紅葉1」の完成図。
「紅葉-1」、ヒント
・・・共通課題「紅葉-1」として、築地塀を背景にイメージしました。
築地塀と銀杏の散り行くさまと葉っぱの彩の変化を表現しました。
「紅葉-1」、制作過程
デザイン、1
・・・築地塀と銀杏が散る行くさまをコラボしたく、紅葉をイメージしました。
デザイン、2
・・・築地塀と銀杏が直接交わる構図で、試し刷りをしてみました。
築地塀と銀杏の互いの存在が主張し合い、紅葉いイメージが生かされませんでした。
<試作品>
当初「紅葉」の試作品、紅葉よりも築地塀が目立ちます。検討の結果、2年後に作品「秋風」として蘇ります。
<ポイント>
- 築地塀と銀杏が交わるが、互いが生かされるよう工夫しデザインする。
- 交わりに緩衝地帯を作る必要があります。
マチエールづくり
・・・試作版は、築地塀とのコラボがうまくいきませんでしたので版木を短くカットしました。
マチエールは銀杏部分には不要なためくり抜きました(写真右=試作段階のカットした部分)。
<マチエールのポイント>
- 粒々づくりはストッパーなどを活用するとよい。
- ストッパーは額に使うマットなどを活用し、版木と同じ高さにする。
- 銀杏にはマチエールが不要なため、その部分のストッパーはくり抜く。
彫り、1
<築地塀>
築地塀は、従来からストックしている版木の中から選び、再使用しました。
新作サイズには、従来の版木が短かったので継ぎ足しました(写真右=継ぎ足し版木)。
<再使用版木のポイント>
- サイズ:新作品に従来版木のサイズが合っているか。短い場合版木の継ぎ足しも便利です。
- 色 調:新作に色調がマッチしていないときは、十分な脱色が必要です。
- 反 り:見た目でそりが入っていると刷りが困難です。彫りなおした方が早いです。
彫り、2
<銀杏>
試作版は、築地塀とのコラボがうまくいきませんでしたので短くカットしました。
銀杏は部分塗り分け方に決めました(写真右=試作段階の版木をカットした部分)。
摺、1
<マチエール>
<マチエール、摺りのポイント>
- マチエールが強すぎるとバランスを欠くので、絵具は薄く(水は少なく)延ばします。
- 薄く延ばす効果を出すのが難しいときは白を混ぜると効果的です。
摺、2
<全体塗り分け方>
築地塀と銀杏のバランスをとるため、和紙を使い版全体を塗り分ける、全体塗り分け方を使用する。
築地塀は、全体のバランスを考えやや濃さを抑え、背景に相応しいようにします。
<築地塀と銀杏、摺りのポイント>
- 築地塀と銀杏は双方が主張し合いバトル状態にならないよう、全体塗り分け方で対応。
- 築地塀と銀杏が交わらぬよう、且つ互いが生かされるよう緩衝線を作るため和紙を手でちぎり境界線をマイルドにする。
- 和紙は片面を型枠に貼り付け、摺りを安定させる。
摺、3
<銀杏は、部分塗り分け方>
銀杏は、版木の一部分を塗り分ける、部分塗り分け方で対応します。
仕上げ
築地塀は、版面の全体塗り分け方で、築地塀の影を摺って完成です。
銀杏は、部分塗り分け方で散り行くさまと葉の色に変化をつけ紅葉を表現し完成です。
木版画教室、「紅葉-2」ヒント・制作過程
・・・銀杏の幹を背景とした、「紅葉2」の完成図。
「紅葉-2」、ヒント
・・・共通課題「紅葉-2」として、築地塀から銀杏の幹を背景に変え、その幅を画面1/3にしました。
銀杏の幹を背景に色づいた葉の散り行くさまとその彩の変化を表現しました。
共通課題「紅葉-2」、制作過程
デザイン
当初イメージ、銀杏が幹をかすめながら散っていく表現しました。
ポイント>
- 築地塀と銀杏が交わるが、互いが生かされるよう工夫しデザインする。
- 銀杏が前面に出るよう、工夫をする。
マチエールづくり
<マチエールづくりのポイント>
- 粒々づくりはストッパーなど凹凸のあるものを活用するとよい。
- ストッパーはマットなどを活用し、版木と同じ高さにする。
- 銀杏にはマチエールを避けるため、その部分のストッパーはくり抜く。
彫り
写真:幹は同じ版木を使い表皮を彫る。
幹は同じ版木を使い、幹の表皮内部と表皮外部び白抜きを活用し、厚みを感じるよう表現しました。
摺、1
<マチエール>
<マチエール、摺りのポイント>
- マチエールが強すぎるとバランスを欠くので、絵具は薄く(水は少なく)延ばす。
- 難しいときは白を混ぜると効果的です。
摺、2
<幹-1>
幹と銀杏の交差する位置を正確に把握し、トレース紙(和紙など)でカバーする。
<幹-2>
幹を摺る前にトレース紙(和紙など)を使用し、カバーする位置を再確認し、摺りを安定させる。
<ポイント>
- 幹の内側(左端)は薄くすり、外側(右端)は濃く表現する。
- 幹と銀杏が交わる場所は、トレース紙(和紙など)でカバーをする。
- トレース紙(和紙など)は、型枠に固定し摺りを安定させる。
摺、3
<銀杏>
幹は、グラデーション及び銀杏と接する部分を一部塗り分け方で対処すると効果的です。
銀杏は、部分塗り分け方で散り行くさまと葉の色に変化をつけ紅葉を表現し完成です。
木版画教室、「紅葉-3」ヒント・制作過程
・・・銀杏の幹の幅を広くし背景とした、「紅葉3」の完成図。
「紅葉-3」、ヒント
・・・銀杏の幹の割合を広く取り、幹を背景に葉っぱの散り行くさまとその彩の変化を表現しました。
さらに「紅葉-3」の背景として、版に占める幹の幅を2/3ほどに広げました。
「紅葉-3」、制作過程
デザイン
ポイント>
- 築地塀と銀杏が交わるが、互いが生かされるよう工夫しデザインする。
- 銀杏が前面に出るよう、工夫をする。
マチエールづくり
<ポイント>
- 粒々づくりはストッパーなどを活用するとよい。
- ストッパーはマットなどを活用し、版木と同じ高さにする。
- 銀杏にはマチエールを避けるため、その部分のストッパはくり抜く。
彫り、1
<幹の表皮内側の表現>
彫り、2
<幹の表皮外側の表現>
摺、1
<マチエール>
<マチエール、摺りのポイント>
- マチエールが強すぎるとバランスを欠くので、絵具は薄く(水は少なく)延ばす。
- 難しいときは白を混ぜると効果的です。
摺、2
<幹>
<ポイント>
- 幹の表皮、外側(右端)に行くに従い濃く摺る(グラデーションを使う)。
- 幹と銀杏が交わる場所は、幹の版側を彫る。
摺、3
<銀杏>
銀杏は、部分塗り分け方で散り行くさまと葉の色に変化をつけ紅葉を表現し完成です。
木版画教室「紅葉」、まとめ
・・・木版画教室の共通課題は「紅葉」でしたが各自それぞれのイメージを膨らませ展示作品を制作中です。
第27回火曜会木版画展は、名古屋市ギャラリー栄7F(10月18日~10月23日)です。
今回は、従来の塗り分け方に加え版木全体の塗り分け方と一部塗り分け方にチャレンジしました。
制作過程・ヒント、ポイントなど参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございまいた。