アート

木版画教室④、作品交換会。2023年:交換作品紹介、制作工程・ヒント・裏技・ポイント

 

・・・朝日カルチャーセンターにある木版画教室の仲間が、日ごろの木版画づくりの中で、

作品について意見交換し、お互いレベルアップを図るべく毎年作品の交換会を行っています。

木版画教室④、作品交換会

・・・今回は、制作時は作品に満足していたましたが、後年に「制作当時の作品をもっと手直ししたい」、

と思われる過去の作品や、もっとレベルアップできるのでは、と思う作品について取り上げました。

その作品は、アスファルトの歩道・排水溝とその蓋の組み合わせをもとにした作品です。

いかにレベルアップするのか、ポイントと過程を題材として、この記事を取り上げました。何か参考になれば幸いです。

2023年:交換作品紹介、その1

・・・その1は、ブログ投稿者自身の交換作品です。仲間全員の交換作品は、交換作品はその2で紹介します。

2022年作品、ラディッシュ

2023年作品、標(しるべ)

制作工程、ヒント・裏技・ポイント

制作工程

・・・今回は、過去に埋もれた作品を再検証し、命を吹き込み復活させる(PDCAの繰り返し)のが目標です。

創作版画では自分だけの思い込みで、足りないもの・余分なものがあるのは当然の一面があります。

それには、作品を第三者の目で見ることも必要。そこがカルチャーセンターに通う最大の理由です。

1.先ず過去の作品を検証

写真:検証材料、過去の作品。

 

2.過去の作品、制作までのヒント

現在でも近隣の新興住宅を散歩がてら、道路・歩道など、作品として面白い構図を見つけるのも楽しみの一つです。

過去の作品は、スファルトの歩道・排水溝とその蓋の組み合わせが興味深く、題材として取り上げました。

過去の作品、改善のヒント3点

・・・過去の作品を検証し、改善すべき3つの点を取り上げ、個々の改善にトライしました。

1.全体のマチエールとして質感が欲しい

  • ゴマすりでセメント感を出す。

2.作品にメリハリが欲しい

  • 作品上部T字型を横一線を黒で締める。
  • 作品中央右側の一部に築地塀柄を入れる。

3.作品の方向性(焦点)が定まらない

  • 最適なポイント(左上方四角い線の上)を定める。
  • 目線を誘導しる→を入れる。

 

改善1.ヒント・裏技・ポイント

1.全体のマチエールとして質感が欲しい

<ヒント>
1.白地に対し、ゴマすりで地上のアスファルト・セメント感を出します。

2.ゴマすりの時使うバレンは、潰しの効果が薄い比較的安価なバレンを使います。

<裏技>

1.発砲スチロール・ジェッソを塗った木版を使用する。

2.今回は発砲スチロールを使用しました(表面のきめの細かい物をお勧めします)。

  • ゴマすり法(絵具は薄く溶く)で対応する。
  • 刷毛は冬毛で幅の広い刷毛を使う。
写真:(左)発泡スチロール、(右)バレン・刷毛
<ポイント>
  • バレン:初心者用の潰しの効果が薄い比較的安価なバレンを使う。
  • 刷毛:冬毛(柔らかい)の幅の広い(2.5cm)以上が使いやすい。

 

写真:(左)ゴマすり法で摺った和紙、(右)発砲スチロール。
<ポイント>
  • 発泡スチロールがない場合、ジェッソを塗ったベニヤ板でもゴマすりを表現しやすい。
  • 絵具は薄く溶きますが、水分を多く含まないよう皿でしごくかタオルで水分を吸収しながら調整する。
<1.全体のマチエールとして質感が欲しい:改善後>
写真:(右)ゴマすり法でマチエールを入れた後の作品。

 

改善2.ヒントと裏技・ポイント

2.作品にメリハリが欲しい

<ヒント>

1.作品上部T字型を横一線を黒で締める。

2.作品中央右側の一部に築地塀柄を入れる。

<裏技>

1.同一版を使う。まず、作品上部T字型を横一線を彫る。同じ向きで築地塀の外枠を彫る。

2.上記の版を上下回転させ、作品中央右側の一部に築地塀柄の内側(瓦)を彫る。

<ポイント>

築地塀内側(瓦)を摺る時は、同一版を上下回転させて摺る。

写真:作品上部T字型を横一線と築地塀外側を彫る、中央右側の一部に築地塀(瓦)を彫る

 

<2.作品にメリハリが欲しい:改善後>
写真:(右)改善後、上部を黒で潰し中央右部分に築地塀柄を入れる。

 

改善3.ヒントと裏技・ポイント

・・・今回の改善記事で最も効果的な一つと思っています「矢印の形状で目線を誘導する」トライでした。

作品の方向性が定まらない

<ヒント>

先ず、作品右下の□に焦点を置き、それに合わせる方向で目線を誘導する。

<裏技>

三角形を伸ばした形で、目線を誘導し→を入れる。

<ポイント>

作品右下の□の焦点から、直線の延長を検討する。最適なポイント(左上方四角い線の上)を定める。

写真:作品右下の□の焦点から、延長を検討し最適なポイント(左上方四角い線の上)を定める。
<3.作品の方向性が定まらない:改善後>
写真:最適なポイント(左上方四角い線の上)から、焦点が作品右下の□に定まる。

 

改善後完成作品

写真:題名「標(しるべ)」に相応しくなりました。

その他

木版教室の交換会は今月(2023年3月)下旬の予定でした。予定通り、全員の作品がそろい交換しましたので、交換作品の紹介を掲載します。

2023年:交換作品紹介、その2

・・・昨日、全員の作品がそろいました。先ずは2023年交換作品の全作品を紹介します(五十音順:「題」、版種の順です)。

浅井重一:「湿原」、木版

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油絵・銅板を経験後、現在木版画でも才能を発揮中。

「湿原」シリーズの版画作品は、高い評価を受けています。

 

石川敦之:「乳頭温泉」、木版

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愛知芸術文化センター(愛知県美術館)の計画・建設にかかわった建築士

建造物・橋梁などへの愛情が感じられる作品が多い。

今回は、「乳頭温泉郷」、風景(植物・川・樹々)も巧みに表現されています。

 

木野聡美:「リス」、木口木版

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バイク(カワサキ)好き。従来の木版で表現する彼女のポエム的な作品は、絵本にピッタリ!

一昨年から始めたばかりの木口(こぐち)木版の上達ぶりは目を見張ります。リスの目力・毛並みがすごい!

 

木村忠夫:「愛中供養菩薩Ⅶ」、木版

従来から漢字文字を背景とした、仏像を対象に版画作品を追求しています。

今回は、背景の漢字文字なしで、古い仏像の持つ造形美にトライしました。

 

近藤盛英:「帰り道6」、木版

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作家自ら棚田を維持するボランティアとして奉仕活動中。

棚田を愛する作家。「帰り道シリーズ」の作品は、棚田愛が伝わってきます。

今回、棚田の模様の表現が際立っています。面白い作品に発展しそうな予感がします。

 

坂井陽子:「Tree3」、木版

コメント

「Tree」シリーズ、大木の迫力ある大胆な構図に特徴があります。

作品の下部にグリーンの配置を入れたことで、木の存在と力強さを見る側に与えます。

絵画力・伸びしろ無限、新人の有望株です。

 

坂倉 健:「What」、木版

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いつも驚く、羨ましい発想!自由で大胆な構図!見ていて楽しい版画です。

今回も、いろいろなものに見えてきます。正にWhat?左下のLの形が効果的です。

名古屋の人は名古屋城の鯱を思い浮かべるかもしれません(笑)。

 

 

佐藤豊子:[My World32」、木版

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糸くずを工夫し貼り付けた、独特のマチエールと黒のパーツの様々な彫りが独特

白黒のバランス・形及び彫りの変化の面白さをご堪能いただければ幸いです。

末 崇子:「Gordes」、木版

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山の頂に向かって石造りの家が折り重なるように見える村「ゴルド Gordes」。

南仏プロヴァンスのリュベロン地方でよく見られる村の景観ですが、なかでもゴルドは、フランスの最も美しい村」のひとつ。

人気の観光地となっています。その天空に浮かぶ姿から別名「鷲の巣村」と呼ばれています。

優雅な雰囲気と優しさを醸し出す、作品の周囲に余白を残す手法は独特です。空の表現(形・位置)も秀逸です。

水彩・油絵・彫刻など経験した後、現在木版画に転向。キャリアを感じる、優雅で美しい作品です。

 

内藤三香:「カラス38」、木版

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彼女の作品でカラスは、ただの黒一色でないことを知りった方が多いでしょう。

黒の中にくすんだ黄緑・青なども発見できます。

力強く大地を掴んだ足に生命力が伝わってきます。何時か羽根を広げ、地面を蹴って飛び立つのでしょうか。

 

羽根由子:「山頭火シリーズ2」、木版

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昨年の夏、絵を愛する夫とともに個展を30年連続開催し、地元新聞の話題になりました。

「猫」大好き、作品のどこかに猫がいます。桜の花びらと優しい猫の顔を巧みに表現しています。

現在、「山頭火シリーズ」にトライ中です。

 

藤崎増男:「標」、木版

コメント

道路・建物など身近なものから作品として面白い形を見つけ、楽しんでいます。

従来の写実的作品のほかに、近年は構図で見せる抽象版画にトライしています。

三角の黒い矢印が、題目の「標」(しるべ)とマッチし、効果的です。

 

三宅 重:「手水舎の秋」、木版

コメント

版画に取り組む情熱と研究熱心さはぴか一、作品の題材も広範囲です。

釣りと山登りを愛する健康ミドル。手水舎の水の質感を見事に表現しています。

 

横川美代子:「三寺参り(飛騨古川)」、木版

作者コメント:飛騨古川三寺参り

飛騨古川に、200年以上も前から続く独特の伝統風習『三寺まいり』について。

毎年1月15日の夜、親鸞聖人のご恩を偲び、町内の3つの寺、円光寺真宗寺・本光寺を詣でるならわしです。

その昔、野麦峠を越えて信州へ糸引きの出稼ぎに行った年頃の娘たちが着飾って瀬戸川の川べりを歩いて巡拝し、男女の出逢いが生まれたことから、

「嫁を見立ての三寺まいり…」と飛騨古川の小唄にも唄われ、縁結びが叶うおまいりとして全国に知られるようになりました。

恋の御利益があるということでたくさんの若者が訪れます。

着物レンタルもあり、着物で着飾ってお参りできます。1月15日頃は、雪も降る時期で夜はとても寒い(=しみる)です。

画面下部のローソク

赤いローソク:お陰様で、良縁がありましたと感謝を込めて、ローソクをともします。

白いローソク:これから良縁がありますようにと願いを込めて、白いローソクをともします。

<作品メモ>これは何?しばらくすると、ローソクに照らされた人間の顔が現れます。作者の持つ独特の表現です!

次は、どんな作品が飛び出してくるでしょう?楽しみです。

朝日カルチャーセンター木版教室

以上、朝日カルチャーセンター木版教室14名(午後の部8名、夜の部6名)の作品紹介でした。

木版画教室の受講は、第2・第4火曜日で、(昼PM1:00~3:00、夜PM6:00~8:00)。講師は畑涼一先生です。

木版画教室、作品交換会のまとめ

・・・自画・自刻・自摺の創作版画の作品に於いては、作者自身では気づかない部分(足りないもの・余分なもの)があるのは避けられない一面です。

そこでは、自分だけの思い込みで作品作りが行き詰まり、スランプに陥ることが多々あると思います。

スランプはだれしも早く脱出したいものです。スランプ脱出の妙薬は?あります!。

それは、「自分の作品を確かな第三者の目で検証してもらうこと」です。

同じ創作版画の悩みも持つ仲間同士で切磋琢磨し、意見交換をする。つまりカルチャーセンターが最適なのです。

新たな作品にトライする。過去に埋もれた作品は再検証し復活させる。いずれもP・D・C・Aの繰り返しです。

今回もたくさんの個性的な作品が集まり、素晴らしい作品交換でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。