・・・現在、第27回火曜会木版画展(2022/10/18~10/23)に向け、作品制作中です。
今回、作品3点「刻-7」・「刻-8」・「刻-9」のヒント・制作過程の記事です、参考になれば幸いです。
完成作品(3点)
木版画「刻-7」、ヒント・制作過程
・・・刻シリーズ4・5・6に次いで今回、3連作の「刻-7」・「刻-8」・「刻-9」にトライしました。
「刻-7」完成予定図
「刻-7」のイメージ作業
A4のコピー用紙を使い、従来作品のコピーと黒の画用紙をカットし、貼り付けました。
作品の左側から光が当たる想定で、右側サイドを色鉛筆(黒)で暗く陰影を描きました。
「刻-7」ヒント
・・・従来からのストック試作品の中から、「刻-7」では立体感を表現することトライしました。
ストック作品は部屋の壁に立てかけ、目に留まるようにしていると何かヒントが出てくる時があります。
今回は、作品の中心を左右に分け、明暗を持たせることで立体感を表現することにしました。
「刻-7」制作過程
「刻-7」デザイン
従来作品の”桝型”に築地塀を二段階加え、桝形を伸ばすデザインを加えます。
作品の奥行を表現するため、作品上部のスペースは黒一面にします。
「刻-7」彫り-1
<桝形の築地塀柄-1>
<桝形の築地塀柄-2>
桝形の築地塀柄は、従来からストックされた版木を使用しました。
<追加の桝形の築地塀柄-3>
版木左側は、築地塀の瓦の縁取り及び作品上方の黒スペース。版木右側は、築地塀の瓦部分。
瓦の縁取りと、作品上部の黒は同じ版です。なお、摺りの時は、左右を反転して使用します。
「刻-7」摺
<摺-1>
ストックする版木
従来作品の桝形を使用します。作品として今後も使用するような(予感がする?)版木は保管しておきます。
<摺-2>
従来版木のマチエールに今回追加した2段階のマチエールを加えます(写真、右側黒い部分)。
<摺-3>
”桝形”のマチエールを摺った後、最後に作品上部の黒を摺ります。
作品の右側半分を暗くします。中心部は和紙の肌を残すくらいにすると、金属みたいな表現になります。
「刻-7」完成品
木版画「刻-8」、ヒント・制作過程
「刻-8」完成予定図
「刻-8」のヒント
・・・作品「刻-7」では、立体感を表現することにトライしましたが、
「刻-8」では、光の強さを表現することにトライしました。
”桝形”を通り抜ける!光の勢いと熱量の表現にトライしました。
”桝形”の中心部の色を薄く表現すること、そして相対的に外周を暗くし、その内側は明るくしました。
「刻-8」制作過程
「刻-8」デザイン
作品の上下を黒で覆い、作品の存在を暗闇の中に浮かぶように表現しました。
”桝形”のを強い光が通り抜ける想定で、桝形の左右サイドを色鉛筆(黒)で暗く陰影を描きました。
光の尾の角度は、平行・先すぼみなど試しましたが、やや広めの角度に落ち着きました。
光の先端の形状は、丸く先端を出します。大きさは光の尾の範囲と同じ程度が適正と思います。
「刻-8」彫り
<彫り-1>
”桝形”は、従来からストックしていた版木を使用しました。
彫りの過程は、「刻-7」の説明と同じにて省略します(「刻-7」参照ください)。
<彫り-2>
作品上下の黒い部分を彫ります。光の先端は丸く円滑に彫ります。
円形を彫るには、彫刻刀の切出しの他工作ナイフを使うとスムーズに彫れます。
<彫り-3>
桝形の内側を彫ります。光の外線と桝形の接点を慎重に合わせます。
背景の黒の部分と瓦の外枠の線を直線にします。試し刷りをオススメします。
瓦部分の版木もはみ出し気味に彫り、試し刷りで後から削るなどして微調整すると楽です。
「刻-8」摺
<摺-1>
<摺-2>
<摺-3>
当初の目標通り、桝形を通り抜ける!光る物体の勢いと熱量の表現にトライしました。
桝形の中心部の黒を薄く表現し、その外周は暗く、その内側は明るくしコントラストをつけました。
光は強く勢いがあるように表現されているか自問しています。
「刻-8」完成品
木版画「刻-9」、ヒント・制作過程
「刻-9」完成予定図
「刻-9」のイメージ作業
A4のコピー用紙を使い、従来作品のコピーと黒の画用紙をカットし、下部に貼り付けました。
作品の左側上方から光が当たる想定で、右側サイド上部に外より三角形の突起(黒)がのぞく。
「刻-9」ヒント
・・従来からストックされた試作品は、静かな作品でしたが、「刻-9」では空気感を表現することにしました。
ストック作品は部屋の壁に立てかけ、目に留まるようにしていると何かヒントが出てくる時があります。
今回は、作品の中心”桝形”の中に存在する空気感の表現にトライしました。
”桝形”の影に明暗の変化を持たせることで空気感を表現することにしました。
「刻-9」制作過程
「刻-9」デザイン
作品の中心に”桝形”を置き、作品左の外側から黒の三角が顔を出す表現にしました。
”桝形”の左上からやわらかい光が注ぐ想定で、”桝形”の右サイドを暗くした陰影を描く予定です。
”桝形”の内側の築地塀柄は奥に存在するので、遠近感を出すため2段を3段に彫りなおします。
「刻-9」彫り
<彫り-1>
”桝形”は、従来からストックしていた版木を使用しました。
彫りは、「刻-7」と同じ説明にて省略します(「刻-7」を参照ください)。
<彫り-2>
<彫り-3>
桝形の内側は手前より遠いので築地塀柄の間隔を狭くしたものを彫ります。
”桝形”の内側の築地塀柄は奥に存在するので、遠近感を出すため2段を3段に彫りなおします。
「刻-9」摺
<摺の作業の事前準備>
- 摺りの作業に入る前、版木を固定する型枠を作ります。
- 和紙の片方を型枠に固定します。反対側は和紙をめくる方です。
- 少量の作品を一作品ごとの制作に適してます。
<摺-1>
写真:桝形の築地塀瓦の内側、今回彫りを追加しています。
<摺-2>
<摺-3>
<摺-4>
<摺-5>
<摺-6>
スタンプ処理をするため、作品上にトレース紙を当て、三角形の位置を決めます。
マットをカットし位置を決め、スタンプ時のずれを防止します。
<摺-7>
版木に色を塗りスタンプ作業前に、作品の下にクッションと給水を兼ね、和紙などを敷きました。
スタンプ処理をしましたが結果は、三角形全体に満遍なく色は付きませんでした。
<摺‐6・7の反省>
ごく小さな点・線などは、割りばし・楊枝等でスタンプ処理できると思います。
しかし、ほとんどは版木で対応したほうが結果的には、早く均一な摺りの作品ができると思いました。
ステンシル技法
ごく柔らかい影の区分は、版木対応では無理だと思いましたのでステンシル技法で対応しました。
やわらかい光が左上方から注ぎ、右サイドを弱い影にしました。
さらに、右奥側サイドに弱い影を入れ、空気感を表現しました。
「刻-9」完成作品
水張り作業
ヒント
- 作品制作後、日数を経過すると額装前に作品が波打ちます。マットと作品を密着させるため、水張りをします。
- 額装前に水張りをして、作品のしわを伸ばします。作品の余白は、上下それぞれ同一幅にカットします。
- カットした余白にあらかじめ5mmほど線を軽く描いておくと水張りテープを貼る目安になります。
作業過程
- ベニヤの上に新聞紙を敷き、その上に作品を裏にして置きます。
- 作品の裏側を水を付けた刷毛で均等に撫で、湿らせます。軽く2~3回繰り返します。
- 小作品であれば2分ほど待ち、湿った作品を表にし、新しい新聞紙で作品を覆います。
- ベニヤの上で、作品の中央から外側へ伸ばすように新聞紙を撫でます。
- ベニヤに張り付いた作品の四方に、水張りテープを貼り、日陰で2日ほど乾燥させます。
完成作品
定規を添え、カッターナイフを使ってベニヤ板から切り離します。
額装前に、作品下方に左からエディション・題・サインをして完成です。
木版画教室③:「刻-7~9」、ヒント・制作過程のまとめ
・・・現在、朝日カルチャーセンターの木版画教室に通っています。
この度、名古屋市民ギャラリーで第27回火曜会木版画展(2022/10/18~10/23)が開催されます。
本記事の作品3点「刻-7」・「刻-8」・「刻-9」の他、蔵書票・年賀状・暑中見舞いも出展します。
展示会では、他のメンバーの作品を観賞するのも楽しみです。ご高覧いただければ幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。