・・・山本鼎・斎藤清・棟方志功など版画作品の魅力に取りつかれ50年、昨年夏に後期高齢者の仲間入りをしました。
カルチャーセンター通いを55才から始め、20年を経過しました。現在は公募展を10年以上連続出展中です。
今月5月の伍人展に出展する抽象作品「刻1~6」の作り方、及び工程・ヒント・裏技そして作品の展開について画像を加えて解説します。
版画ファンの方々及び作家の方々にお役に立つ情報があれば幸いです。
木版画、抽象作品「刻-1」の作り方
・・・先ず作品をイメージしますが、下記の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
1.工程
・・・まず築地塀をイメージしたマチエールを施します。
1.マチエールづくり
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
2.マチエールづくりの素材
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりの素材ですが、現在はストッパーをカットして使っています。
2.ヒント
・・・ひし形の築地塀を彫ります。同型のマット紙にストッパー(百均で入手)をカットし貼り付けます。
1.同じパーツを複数作る
ひし形の組み合わせを複数作ることにより、組み合わせ次第で作品の創造を後押しする力の幅が広がります。
2.版木ごとの図柄の端を合わせる
各パーツの図柄の末端は互いに一致させて、今後の展開が可能なように彫ります。
3.裏技
1.版木を囲む枠づくり
外見当の作品作りは、摺りを安定させるためマット紙で作品を囲む枠を作ります。
和紙もガムテープで左端の枠に貼り付けるとずれません(両端、真ん中の三か所で十分です)。
2.摺りの作業を安定させる(刻-1のケース)
・・・摺りの作業を安定させるため、マット紙を三角形にカットし枠と版木の隙間を埋め、版木を固定します。1.版木を囲む枠づくり。
4.背景色の黒を摺る
・・・最後に背景の黒を摺って完成です。摺りの工程は最終ですが、版木は最初の枠づくりに活用します。
木版画、「刻-1」から「刻-4」へ展開の仕方
・・・先ず「刻-1」の展開後の「刻-4」作品をイメージしますが、下記の展開後の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
「刻-4」はご覧のように築地塀柄のトップが明るく、輝くようなイメージです。
1.工程
・・・まず築地塀をイメージしたマチエールを施します。
1.マチエールづくり
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
2.マチエールづくりの素材
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。現在はストッパーをカットして使っています。
2.ヒント
・・・ひし形の築地塀を彫ります。同型のマット紙にストッパー(百均で入手)をカットし貼り付けます。
1.同じパーツを複数作る
ひし形の組み合わせを複数作ることにより、組み合わせ次第で作品の創造を後押しする力の幅が広がります。
2.図柄の端を合わせる
各パーツの図柄の末端は互いに一致させて、今後の展開が可能なように彫ります。
3.裏技
1.版木を囲む枠づくり(刻-1と同じ)
外見当の作品作りは、摺りを安定させるため枠を作ります。和紙をガムテープで左端の枠に貼り付けるとずれません。
2.摺りの作業を安定させる(刻-1のケースと同じ)
摺りの作業を安定させるため、マット紙を三角形にカットし枠と版木の隙間を埋め、ベニヤ版を固定します。
4.背景色の黒を摺る
・・・最後に背景の黒を摺って完成です。摺りの工程は最終ですが、版木は最初の枠づくりに活用します。
1.工程
作品「刻-1」の築地柄のトップに白の斜線を入れるため、版木を斜め鋭角にカットする。
2.ヒント
築地柄のトップに白の斜線を入れるため、版木を斜めにカットし、和紙の地色を利用する。
3.裏技
築地柄のトップ部分を斜めにカットする時、版木を右側に置き先ず低い部分に定規を当てます。(右利きを想定)。
左手で定規を固定し、低い部分から高い部分へ向かいカッターナイフを走らせます。
理想の線が引けるまで、当初は少しづつ慎重に作業をすすめます。めどがついてから強く引きます。
木版画、抽象作品「刻-2」の作り方
・・・先ず作品をイメージしますが、下記の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
1.工程
1.版木を囲む枠を作ります
・・・まず今後の展開を考えて、作品大の枠を作ります。
2.マチエールづくり
・・・築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
3.マチエールづくりの素材
・・・築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。現在はストッパーをカットして、マット紙に貼って使っています。
1.作品手前の築地塀柄V型のマチエール。
2.築地塀柄の奥の版木用のマチエール
摺りの作業をスムーズに行うため、版木のずれ防止にマットをカットし枠と作品との間を埋めています。
2.築地塀柄の彫り
・・・ひし形の築地塀柄2枚を向かい合わせにした柄で、筒型をイメージさせます。
今後の展開を考え前方の築地塀V柄の版木は分けません。奥側のひし形の版木との組み合わせで対応しました。
1.作品「刻-2」の前面築地塀V柄の版木
写真中央:作品「刻-2」の前面築地塀V柄の版木。
2.作品「刻-2」の奥、築地塀柄ひし形版木
写真左側:作品「刻-2」の奥、築地塀柄ひし形版木。
3.ヒント
1.版木2枚の組み合わせで立体感を出します
作品前面の築地V柄とひし形の図柄を組み合わせます。その事により、筒型をイメージさせることが出来ます。
筒型をイメージさせることが出来、さらに背景を黒色にすることで奥行を感じさせます。
4.裏技
1.上下同型の黒色の背景
背景色の黒は、同じ版を反転利用しています。あらかじめ作品の版木を囲むと、版木の回転・移動の際役立ちます。
2.抽象的作品の演出
筒型上部に三角型のポイントを入れることにより抽象的な演出をします(ステンシル法と合わせて対応)。
写真右側:作品「刻-2」の下方、黒色の背景。
木版画、「刻-2」から「刻-5」へ展開の仕方
・・・先ず展開後の作品をイメージしますが、下記の展開後の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
作品「刻-5」は、「刻-2」より、さらに立体感を表現しようと思いました。
1.工程
1.版木を囲む枠を作ります
・・・作品「刻-5」は、「刻-2」より3㎝程長く、作品の構成を考えて、作品「刻-5」を囲む枠を新たに作りました。
2.マチエールづくり
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
3.マチエールづくりのヒント(素材)
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりですが、現在はストッパーをカットして使っています。
1.作品「刻-5」の前面の築地塀柄、マチエール
ストッパーを作品前面の築地塀柄Vに合わせ切り抜き、マット紙に貼り合わせてあります。
写真:ストッパーをカットし、マット紙に貼り合わせてあります。
2.上部奥の築地塀柄ひし形、マチエール
ストッパーを作品上部の奥に合わせ切り抜き、マット紙に貼り合わせてあります。
写真左側:ストッパーを作品上部の奥に合わせ切り抜き、貼り合わせてあります。
2.築地塀柄の彫り
1.作品「刻-5」の築地塀柄V型の版木
築地塀V柄は、同一の版木に彫ります。今後の展開を考え版木は分けません。
2.作品「刻-5」の上部の奥、ひし形版木
作品上部のひし形版木は、別の版木に彫ります。小さいので摺りの作業がしやすいようにマット紙でカバーします。
写真左側:作品「刻-2」の奥、築地塀柄ひし形。
3.築地塀柄の瓦部分の摺
1.築地塀柄の前面側
・・・築地塀柄の前面の瓦部分を摺ります。
写真中央:築地塀柄の瓦部分を摺ります。
2.築地柄の奥側と上部三角形
・・・築地塀奥側の瓦部分と上部三角形の版木を摺ります。
2.ヒント
1.立体感を出す工夫
築地塀柄V型とひし形を組み合わせることで、筒を連想させます。
さらに背景を白紙にすることにより、筒が空中に浮遊しているイメージにします。
そして、作品下部を黒い平行線で表現することにより、筒が浮遊しているイメージを出しました。
2.上部三角形を強調
さらに上部三角形を強調するために、通常の摺りの上からステンシル法を併用し存在感を高めました。
3.裏技(空中に浮かぶイメージ)
・・・空中に浮かぶイメージを出すには、作品(筒型)の位置が非常に大事です。
作品を締めるため作品上部に軽くグラデーションをかけました。
作品最上部背景から作品(筒型)最上部までの距離「A」と、地上からの作品(筒型)最下部までの距離「B」を比べます。
「A」が「B」より少しでも長いことは、上部を広く感じさせるため上昇を暗示させます。
作品「刻-5」完成品
木版画、抽象作品「刻-3」の作り方
・・・先ず作品をイメージしますが、下記の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
右端のかすかな鋭角の白地は、背景色を摺る時に現れた「版画の神様からのご褒美」でした。
写真:築地塀柄の右側トップに和紙の下地(鋭角の白)が効果的です。
1.工程
・・・まず築地塀をイメージしたマチエールを施します。
1.マチエールづくり
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
2.マチエールづくりの素材
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。現在はストッパーをカットして使っています。
2.ヒント
・・・ひし形の築地塀を彫ります。同型のマット紙にストッパー(百均で入手)をカットし貼り付けます。
2.ヒント
・・・ひし形の築地塀を彫ります。同型のマット紙にストッパー(百均で入手)をカットし貼り付けます。
1.同じパーツを複数作る
ひし形の組み合わせを複数作ることにより、組み合わせ次第で作品の創造を後押しする力の幅が広がります。
2.図柄の端を合わせる
各パーツの図柄の末端は互いに一致させて、今後の展開が可能なように彫ります。
3.裏技
1.パーツの移動
築地柄の右側が不足しますが、先ず左側と中央の2枚の版木を摺ります。
2.作品のつながり
左側版木パーツを右側版木に移動します。あらかじめ各パーツは相互に連続するように彫ってあるので、作品としてつながります。
4.背景色の黒を摺る
・・・最後に背景の黒を摺って完成です。摺りの工程は最終ですが、版木は最初の枠づくりに活用します。
1.工程
作品「刻-3」の築地柄のトップに白の斜線を入れるため、版木を斜め鋭角にカットする。
2.ヒント
3.裏技(版画の神様からのご褒美)
版木を反転すると片方の背景の摺れます。両方彫る必要はありません(左右どちらか彫りたいときは別です)。
築地塀と背景のわずかな狂いで、偶然片方のトップに白い隙間ができ結果オーライとなりました。
作品を摺ってみて、想定より好ましくない結果になることもあり、少しは落ち込みます。
しかし、予期せぬ結果がオーライで「版画の神様からのご褒美」があることもあります(笑)。
木版画、「刻-3」から「刻-6」へ展開の仕方
・・・先ず「刻-3」の展開後の「刻-6」作品をイメージしますが、下記の展開後の完成作品をご覧いただいた方が良いと思います。
「刻-6」はご覧のように築地塀柄の後方中心が明るく輝き、全体に立体感を表現したイメージです。
1.工程
・・・まず築地塀をイメージしたマチエールを施します。
1.マチエールづくり
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。凹凸のある素材ならいろいろ試してみましょう。
2.マチエールづくりの素材。
築地塀柄の定番の粒々のマチエールづくりです。現在はストッパーをカットして使っています。
2.ヒント
・・・ひし形の築地塀を彫ります。同型のマット紙にストッパー(百均で入手)をカットし貼り付けます。
1.同じパーツを複数作る
ひし形の組み合わせを複数作ることにより、組み合わせ次第で作品の創造を後押しする力の幅が広がります。
2.図柄の端を合わせる
各パーツの図柄の末端は互いに一致させて、今後の展開が可能なように彫ります。
裏技
1.パーツの移動
築地柄の右側が不足しますが、先ず左側と中央の2枚の版木を摺ります。
2.作品のつながり
左側の版木パーツを右側に移動します。あらかじめ各パーツは相互に連続するように彫ってあるので、作品としてつながります。
4.背景色の黒をグラデーションで摺る
・・・最後に背景の黒を摺って完成です。摺りの工程は最終です。作品の中心を白く抜き立体感を持たせます。
1.工程
作品「刻-3」の築地柄の背景の範囲を使用し、上下方向から中心に向かい、中心部を白く残すグラデーションをかけます。
2.ヒント
3.裏技(ぼかし)
版木を反転しながら、あてなしぼかしを実行します。
<あてなしぼかし>
- 片方に絵具を載せ、反対方向に向かって徐々に薄くなり白に近づきます。
- 実行する前、版木を15~30分ほど水に浸けた後使用します。
- 使用する時は、表面の水分はしっかり拭き取った後、作業します。
- 絵具を載せたくないところは、予めジェッソなどでコーチングしておくと失敗しません。
実行する前、手持ちの不要な和紙などで試し刷りをお勧めします。
高価なバレンは、ぼかしには向きません。比較的低価格なバレンは、ぼかしの時役立ちます。
<ふきぼかし>
- 版木に絵具を付けた後、薄く表現したいところの色を拭き取るなどしてから摺ります。
- 絵具を薄く表現するための道具として、布など使い、その部分の絵具を軽く拭き取ります。
狭く細かい場所を薄く拭き取りたいとき(目・果物の光など)は、綿棒を使うと効果的です。
乾いた筆など使用して、絵具を拭き取る手もあります。
木版画(刻)「抽象作品展開の仕方」のまとめ
・・・今回、木版画作品「刻」シリーズのケースで、抽象版画作品の展開事例を解説しました。版画伍人展
尚、刻ー5・刻-6は、下記のごとく版画伍人展へ展示予定です。
抽象版画は、実在するものにとらわれることなく、自分で作り出した形・色を展開する楽しさ・創造する喜びがあります。
木版画をはじめたころ
・・・思い出してみましょう(自分のケースです)。カルチャーセンター通いを55才から始めた頃を・・・。
具象作品でも、何を彫ろうか悩みました。その対象が決まっても、版木の展開・色・摺る順番が決まっても。
次にベニヤを彫る作業、和紙に摺る段階で・見当・和紙の使い方・絵具など悩みました。
それを乗り越えてきた自分を信じてください。具象作品の次に、抽象作品にもトライをお勧めします。
抽象版画のオススメ
・・・具象でも今は創作版画が主流です。自分流にデフォルメ・省略し、自分なりの表現を加えましょう。
従来ある出来上がった作品を、そのまま写し・彫り・和紙に摺る版画活動はもったいないです。
自分の中に持っている、芸術活動で一番大切な「自分を表現する喜び・能力」が育てましょう。
今回、抽象作品「刻」シリーズのケースで展開を解説しました理由は、抽象作品は創造・展開ができる楽しさが潜んでいます。
あなたの仕上げた作品が、「まだまだ展開できますよ」と話しかけてくるように感じる時があります。
抽象作品にトライし、展開する楽しさ・創造する喜びに出会っていただければ幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。