・・・25才の頃から木版画に取りつかれて50年、昨年夏に後期高齢者の仲間入りをしました。
木版画教室通いを55才から始め、20年を経過しました。現在は公募展10年以上連続出展中です。
今回、5月の伍人展に出展する抽象作品「連22」を制作する工程・裏技・ヒントを、画像を加えて解説します。
版画ファンの方及び作家の方々にお役に立つ情報があれば幸いです。
工程1.抽象作品「連22」シリーズ、完成作品をイメージ。
・・・抽象作品でも完成状態のイメージはかかせません。今回は、5月に出展予定の伍人展に向けての制作が前提です。
抽象作品「連22」は、シリーズで1~4まで制作予定をしています。「連22-1」は作成済みです。
今回は「連22-2」における作成工程を画像と共に説明します。下記左画像が「連22-2」の完成作品のイメージです。
今回作品「連22-2」の発想の原点。
・・・写真右側作品「連22-1」は、「天空は、あらゆる面で我々に向かい何かを絶えず注いでいる」イメージです。
それに対応する今回の作品「連22-2」は、「天空から降りてくる何かを地上で絶えず受け止めるイメージ」を表現することにしました。
工程2.抽象作品「連22-2」の実物大の下絵を作成。
・・・当初の作品のイメージを基に実物大に拡大した下絵を別紙に描きます。その下絵を反転しトレースに入ります。
当初イメージを実物大の下絵にします。
実物大の下絵を反転し、トレースの準備をします。
下絵づくりのヒント
・・・当初イメージの作品と実物大のサイズを測り、その倍率を出します。
倍率を基に縦横を測り、個々の位置を定めます。別紙(実物大)に描いた後、反転しトレースします。
工程3.彫り
1.作品下部、築地塀模様。
・・・築地塀柄は、今後も作品に使用する機会が多いと予想されますので保管しています。
ヒント:今後も使用の予想される版木は切り取り、大きさ・形別に保管しています。
裏技、保管する版木は6mmが向いています。ビニール袋などに入れて保管しています。
薄い版木は、長年の間に反ってきます。再使用の時、摺りが困難になり扱いにくいので保管には向きません。
築地模様及び最下部は、保管中の版木を使用。
今回も築地塀の版木を使用します。又最下部も保管中の版木を使用しました。
2.作品上部、空間部分。
・・・空間部分の彫りは、トレース通りに彫り進めます。
角の部分は摺り後、バレンで和紙に段差を残さないように斜めにさらいます。
はみ出し部分の作り方
今回、初めての試みが広範囲の背景でのグラデーションともう一つは、はみ出し部分を作るでした。
ヒント1.はみ出し部分の版木側対応:別の木片を当て、はみ出し用の版木を作ります。
裏技:トレースのタインミング:元の版木を彫った後、別の版木を従来の版木と同じ高さに保ちトレースします。
工程4.摺
1.築地塀、マチエールづくり。
2.築地塀、瓦部分。
3.築地塀、瓦の枠。
4.築地塀、影の部分(グラデーション)。
2.作品上部、背景のマチエールづくり。
・・・今回の抽象作品「連22-2」の特徴、背景を広範囲にわたるグラデーションで作成することにしました。
<初トライ、広範囲(背景)のグラデーション>
初トライの心理状態は、失敗した時の怖さと・成功した時の達成感が入り乱れます。
失敗しても、自分の前の紙面上の話なので、恐れることはありません。
何も悪いことをしているわけではありませんので、チャレンジ精神を忘れないようにしましょう。
ヒント1.:グラデーションづくりの素材探し。
裏技、数ある滑り止めの中から、百均の滑り止め数種類を試刷りします。
その中から、和紙と絵の具の相性が良いものを見つけて使用します。
素材を決め、作品に沿ってカットしマットに糊付け。
ヒント2.カット後の素材はマット紙に糊付けします。マット紙は版木の厚さと同じにします。
裏技、版木6mm使用の場合は、マット紙は2枚重ね4mmでプラス素材2mmで丁度版木と同じ厚さになります。
背景(広範囲)グラデーションの摺作業。
ヒント1.完成時、グラデーションを避けたい部分は、和紙などを切り抜きカバーをします。
ヒント2.グラデーションの絵具は薄く溶き、延ばすのが原則。何回でも上げ刷りをし完成を目指します。
裏技、上げ刷りを摺る時、少しづつ素材の位置を、上・下・左・右にずらし、粒々の間隔を詰めます。
3.はみだし部分の対応
・・・今回、初めての試みが広範囲の背景でのグラデーションともう一つは、はみ出し部分を作るでした。
ヒント:はみ出し部分の摺りのタイミング:本体が摺り終わってからはみ出し部分の版木を固定し摺りました。
写真:真ん中は、はみ出し部分の版木(固定します)。
工程5.完成に向け調整
・・・すりの作業が終わり、全体に色合い・明暗バランスなど当初イメージと比べながら点検します。
1.問題点を見つけます。
作品左上の赤いひし形が、背景の水色のごまと混ざり存在感が乏しい。
2.解決策を検討します。
摺りを重ねても透明感が出ないので、コラージュで対応しました。
写真:「連22-2」、仮の完成。
工程6.額装前の水張り
・・・仮完成の作品は水張り作業で、和紙の細かなしわ・歪みを調整します。
今回は摺の作業後、速やかに水張り作業に入りましたので、スチームアイロンを使用した説明をします。
1.作品の周囲をカットする。
摺りあがった作品を額装に合わせ周囲をカットします。
2.スチームアイロンを準備する。
新聞紙を2~3枚敷、その上に作品を裏返しに乗せます。スチームアイロンを低温にセットします。
3.作品の中心から外へアイロンをかける。
スチームアイロンを低温のまま、作品の裏側に新聞紙を当て内側から外側へ伸ばすようにかけます。
4.水張りテープを貼る。
アイロンがけの終った作品に水張りテープを貼ります。尚、作品に対し、四方向とも平行に貼ります。
ヒント:新聞紙のヘリを作品のヘリと平行に置き、水張りテープを平行に貼る目安にします。
5.陰干し期間
水張り作業後、和紙の多少のしわやたわみは陰干しで修正されますので、陰干し期間は2~3日は必要だと思います。
抽象作品「連22-2」、のまとめ
・・・今回、初めての試みが広範囲の背景での広範囲グラデーションともう一つは、はみ出し部分を作る方法でした。
尚、前回「連22-1」も水張り作業前に、スチームアイロンを利用し、問題ありませんでした。
参考になることがありましたら幸いです。最後までご覧いただき有り難うございました。
抽象作品「連22-3」、「連22-4」の作り方
・・・連22-3,連22-4の制作工程は、連22-2の制作工程と重なるところが多いため、説明の重なる部分は省略しました。
一方、写真を多く活用しました。文字は、ヒント・裏技の要点に絞り記載しました。
工程1.完成品をイメージする
・・・連22-3・連22-4のイメージは、左の連22-3から右の連22-4への移動する横の動きを表現しました。(下記参照ください)。
工程2.実物大の下絵を作成
下絵の作成説明文「連22-3・連22-4」は、「連22-2」と共通にて省略します。
工程3.彫り
・・・写真の左下と右下に、三角形の彫りを加えます。共通の部分はの説明文は省略します。
「連22-3」の彫り。
「連22-4」の彫り。
工程4.摺(1):「連22-3」の摺。
「連22-3」の摺-1。
「連22-3」の摺-2。
築地塀の部分のマチエールです。
「連22-3」の摺-3。
築地塀の瓦部分の外形を摺ります。
「連22-3」の摺-4。
築地塀の瓦部分の色付けです。
工程4.摺(2):「連22-4」の摺。
「連22-4」の摺-1。
ヒント:築地塀を彫った部分が、摺りの時に動かないように固定します。
裏技:固定方法は、マットを正確にカットし隙間にはめ込みます。その後マットが動かないようにガムテープで固定します。
「連22-4」の摺-2。
築地塀のマチエール部分を摺ります。
「連22-4」の摺-3。
築地塀部分の瓦部分の外観を摺ります。
「連22-4」の摺-4。
赤色の部分を摺ります。
「連22-4」の摺-5。
工程5.完成に向け調整、「連22-3」・「連22-4」。
「連22-4」のチェック
・・・黒と交差する赤い菱型がはっきりしないので、コラージュすることにしました。
コラージュする赤のひし形を作る方法。
ヒント:赤い菱形は、同質の和紙を利用します。
裏技:まず赤いひし形を薄い別紙にトレースします。トレースした後、切り取り和紙の上に乗せ、重ねてからハサミかカッターでカットします。
赤のひし形を貼り付ける方法。
ヒント:貼り付けるには、両面テープを二本使うのが便利で重要です。。
裏技:両面テープは二本使う。①まず、片方をはがし、もう片方は、はがさない。②位置が決まってから、先にはがした方を張り付ける。③残りのテープをはがし、残りを張り付ける。
「連22-3」・「連22-4」とも、上部に薄青のグラデーションを入れる。
抽象作品「連22-3」の完成。
抽象作品「連22-4」の完成。
抽象作品「連22-3」、「連22-4」の作り方のまとめ
・・・来たる5月の24日から開催される、版画伍人展に出品するために、「連22-1」から「連22-4」迄の4点にトライしました。
写真:左から連ー1,連ー2,連ー3,連ー4。
一度に4点を展開する制作は初めてでしたので、不安もありましたが、トライする気持ちがそれを辛くも上回ったかな、との感じです。
これからもチャレンジ精神をもって、トライする楽しみを追求したいと思います。
今回「連22-1」から「連22-4」迄読んでいただき、何か参考になれば幸いです。
今後とも応援を宜しくお願いします。最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。