・・・2024年6月5日~9日「版画伍人展」に向け、出展作品「層-24」を制作中です。
作品「層-24」制作のヒント・工程・裏技など記事にしました。木版画愛好家の方々に参考になれば幸いです。
抽象木版画:作品「層」シリーズ
・・・抽象木版画の作品「層」シリーズの制作は、築地塀模様の組み合わせを模索した作品です。
築地塀模様は、熱田神宮に現存する「信長塀」をモチーフとした版画作品の原点です。
「層-24」制作ヒント
・・・前述の伍人展に出展予定の「層-24」制作に至るまでの経緯を当初→前回→今回の順に作品の画像で紹介します。
当初の作品
築地塀模様の組み合わせを模索していたころの作品。真ん中のデザインが浮いた感じがします。
真ん中の黒を下方に伸ばすか、赤を右方向に伸ばすか思考していた頃の作品です。
前回の作品
カルチャーセンターの講師のアドバイスもあり、横向きの作品を縦にして検討しました。
真ん中の赤を上に黒を下に待っていき、黒を下方に伸ばすことにより全体のバランスが取れました。
今回の作品「層-24」
今回、更に下方の築地塀柄を黒の帯を中央に左右とも横方向に変更しました。
結果、目線が上方の黒から築地塀柄の縦方向、から中央赤に止まります。
その後に築地塀柄に従い左右にながれる、全体としてまとまりが出来ました。
仮完成「層-24」
完成、「層-24」
制作工程
デザイン
今回の「層-24」は、いきなり裏技です。と言うのは通常の工程は、デザイン→トレース→彫りとなりますが、
今回、デザインは前作(大全紙)を参考にし、彫りはストックしたベニヤを活用するので彫りは一部になります。
1,作品サイズの木枠を作る
作品のサイズ(57×39cm)を想定し、サイズに対応した木枠を作りました。
2,保管中のベニヤのストックを使う
保管中のベニヤのストック柄の中からサイズを合わせる作業(上部、縦の築地柄・カット作業)。
3,不足部分を作る(→彫る作業)
不足する最上部の黒帯分は、ベニヤをカットし築地塀に合わせ波型にトレースする。
彫り
1,最上部の黒帯部分
前述、最上部の黒い部分を波型に彫りました(37.0×平均5.0㎝)。
2,上部の築地塀縦柄の尺不足部分(1.5㎝)
全体バランス上、上部の築地塀縦柄の尺不足部分(39×1・5㎝)を彫りました。
- 位 置:中央、築地塀の長方形、39.0×1.5㎝。
- 摺る時:横と縦の築地塀に挟み、固定します。
3,下部中央の黒と赤の長方形をベニヤ作成
- 中央:赤の長方形、10.0×5.0㎝。
- 下部・黒の長方形、25.5×10.0㎝。
*裏技:中央の黒と赤の長方形、彫らずに版木を利用する
- 目標とする形を版木で切り出し、その版木を所定の位置に置きます。
- 版木より薄いマット(2~3mm)を使い、ガムテープで所定の位置に固定します。
摺りの作業
1,マチエール:下部の黒及び中央赤部分以外をマチエール。
*裏技:マチエールを避ける中央をカバーする
- 下部黒の部分:ベニヤ部分を両側からマットで挟み固定する。
- 中央赤の部分:上記黒のベニヤ部分に赤部分を覆う和紙をテープ(めくれるように)でつなぎます。
2,前述1,で施したマチエール部分に、築地塀柄の瓦部分を摺ります。
裏技:マチエールの作り方
- 今回は、コルクを使ってみました。回転したり、上下縦横方向にずらすだけでかなり効果的にマチエールを作れます。
- 色んなものを使ってみて試すとよいでしょう。ストッパー、壁紙の凸凹の面を利用しても出来ます。
3,前述2,で施した築地塀瓦部分の外郭を摺ります。
4,中央の赤と黒及び最上部の黒を摺りました。
5,築地塀全体に影を付けます。
仮完成後、再検討
自分では「感性した!」と思っても、必ず第三者に感想を求め意見を参考にします。
なるほどと思った意見・疑問に思った意見も吟味し採用すべきは採用納得できない意見は参考にします。
仮完成後再検討
- 問題点:作品上部「黒の横一線」と中央下の「黒の縦伸び」が互いに主張し、強調されている。
- 解決策:「黒の横一線」の左上部に茶色の築地塀を思わせる一片を配置する。両方の調和、作品の一体化に効果がある。
作品完成
その他
・・・今回「版画伍人展」の案内状に採用されたデザインは、本件制作「層-24」の基となった前作品です。
- 開催期間:2024/6/5~6/9。
- 開催場所:ギャラリー(J2室)、名古屋市東区東桜1丁目13-2。TEL052-971-5511
- アクセス:地下鉄東山線・栄。
- 開催時間: AM10:00~PM6:00(最終日はPM4:00迄)。
抽象木版画:作品「層」シリーズのまとめ
・・・前述の伍人展に出展予定の「層-24」制作に至るまでの経緯を当初→前回→今回の順に作品の画像で紹介しました。
振り返れば55歳から始めて20年以上経過しました木版画教室ですが、今日に至るまで興味は尽きません。
と申しますのは、従来作成した作品をある時期(講師・メンバー入れ替え等)に教室仲間と改めて検討してみました。
すると、自分で気づかなかった事、こうしたほうが思いが伝わるのでは?など、新たな見方が出てきます。
自分一人の考えや解釈では限界があります。教室は、いろんな見方をする仲間と意見を交換する場です。
スポーツ・芸術は、パフォーマンスをする側と観る側があって初めて成り立つと思っています。
これからも健康の許す限り、木版画を愛する仲間と共に創作活動を継続できれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。