・・・過去、築地塀柄一面の画風から脱却すべく、「土塀」シリーズにトライしました。
今回は、「土塀」②として、過去の作成した「土塀」作品を、再展開させるべくトライするものです。
裏技:版木の分割・合体、金の粒々のマチエールの作り方・交差部分の黒膜の表現方法など、何か参考になれば幸いです。
抽象木版画:作品「土塀」②、展開
・・・先ず、下記「土塀」シリーズ第一号の作品を「土塀」②として展開します。
作品の展開、ヒント
デザイン、ヒント
ヒント
1.前作の築地塀と金色のマチエール・背景の黒と中心部分の黒膜は引き継ぐ前提でデザインします。
2.今回展開後の作品は、築地塀柄一辺倒でなく、空間を取り入れ画面の圧迫感に変化をもたらす配置にします。
3.前回作品のサイズ内に収めることを参考に、版木のパーツを増やし、組み合わせデザインします。
作品の展開、工程
ヒント1.2及び3に対応
裏技
前回作品「土塀」16-2を写真で撮り紙印刷した後、各パーツに分解しました。
作品の右側部分を占める築地塀をさらに分解した結果、鍵型スペースが生まれました。
展開、1.
先ず、今回作品のサイズに合わせた枠を作りました。ストック中の従来の版木を集めました。
サイズ枠の中でストック中の各版木を選択し、新作品のデザインを組み立てました。
従来作品と同じ枠の中で大まかなデザインを組み立てる。
展開2.
上記デザイン1.で使われた各パーツを縮小した型紙を作成し、マット紙に貼り付けました。
カギ型のパーツは、三色を用意しどの色がマッチするか検討します。
展開3.
中央の黒の中心よりやや下に白い窓を設け、遠近感を表現しました。
窓の位置・大きさは、三つのパターンを仮設定し検討しました。
展開4
展開1~3を経て、デザイン型紙を組み立て、下記デザインに決定しました。
前作品「土塀」展開後、最終的なデザイン。
工程、裏技
工程、デザインをトレース
1.版木用(作品反転)パターンを作成
裏技:パーツ毎の型紙を使い、版木用(作品反転のパターン)にセットします。
パーツ毎の型紙を使い、版木用(作品反転のパターン)を作ります。
2.実物大にトレース
3.中央の黒く覆う部分(青の斜線)
中央を黒く覆う部分は、ジェッソを塗ります。窓の部分は、着色しません。
裏技:中央の黒く覆う部分は、原寸大でトレースした図面を参考に版木を作成し、影を表現するためジェッソを塗ります。
窓部分(白)は、版木をくり抜き着色せず和紙の地の白さで表現します。
4.カギ型の版木(=赤の斜線)
裏技:赤に着色するカギ型版木(縦・横部分)は、原寸大でトレースした図面を参考に作成します。
カギ型に作成した版木は、周りの築地塀柄のマチエールを避けるためで、摺りの作業に有効です。
彫り
裏技
三つの築地塀柄・カギ型版木・中央黒と窓の版木、それぞれの版木を分割し彫ります。
築地塀柄、三つの部分(瓦外枠)の彫り
カギ型版木
縦版木4.5cm、横版木4.0cm。
中央の黒い膜
中央を黒く覆う部分は、ジェッソを塗ります。窓の部分は、着色しません。
摺り
裏技1.台枠(自作)
・・・摺る前に和紙を固定する台枠を作成します。あらかじめ台枠はべニア版の上に設置。
和紙を固定する台枠、粒々のマチエールを摺るためカギ型版木と中央の窓部分にマットを貼り付けてあります。
裏技2.台枠に和紙をセット
(左側)和紙を台枠に固定、(右側)和紙をめくり棒に固定。
<和紙を台枠に固定>
摺りの時に和紙を動かさないよう台枠の左側に固定しする。上・下・中の三か所に固定するのがベターです。
<.和紙をめくり棒に固定>
和紙をめくる側には、ガムテープでめくり棒に固定する。上・下・中の三か所に固定するのがベターです。
2.粒々のマチエールを摺る
裏技(1)
版木・コルクやストッパーの裏など粒々を表現できるものを利用し、粒々のマチエールを表現します。
百均の滑り止め(ストッパー)など、さまざまな種類を実際に和紙に摺って確かめます。
商品(ストッパーなど)の表も裏も摺り具合を試してみます。
裏技(2)
カギ型版木と中央の窓部分のマットは、台枠に貼り付けマチエールを摺る時の作業を助けます。
粒々マチエールが、カギ型と窓部分を避けて摺られています。
<三つの長方形、築地塀柄全体>
裏技:窓部分には、築地塀柄の摺りを避けるため二~三方からカバーを台枠に貼り付けました。
4.瓦外枠
<三つの長方形、外枠>
裏技(1)
三つの長方形は、裏に瓦本体・表に瓦の外枠が彫ってあります。
反転して、前述瓦の様に外枠を摺っていきます。
濃淡を見ながら黒枠の薄い所は、上げ刷りをし、全体を整えます。
5.長方形の築地塀と中央の黒膜
裏技:透明水彩(黒)を使った刷りです。
裏技(1)
中央の黒膜の版木は、別の版木で対応します。
裏技(2)
築地塀柄と中央交差部分黒膜の版木には、予めジェッソを塗って乾かしておきます。
築地塀柄の影とカギ型
<築地塀柄の影>
裏技1.
築地塀柄の影部分は基本的にべインズグレイが効果的です。
さらに強い影の部分は黒(透明水彩)を使います。
<カギ型版木>
裏技1.
築地塀柄とずれが生じないよう、縦の垂直と横の水平の二つの版木を築地塀柄版木に挿入します。
版木に位置を決め、版木が動かないようにマット紙を周囲にあてがい台枠に固定します。
7.築地塀柄の瓦毎の色付け
裏技
築地塀の瓦毎に、和紙などをくり抜きステンシル法で着色します。
ステンシル法での色分け作業に変更後、彫りと摺りの労力が格段に軽減されました。
作品完成
中央の黒膜
窓に近い部分をさらに濃い黒にし、二重に表現しました。ステンシル法で着色しました。
水張り
水張りは、湿気の多い曇りか雨の日に行います。2日以上陰干しにします。
水張り後、当初のデザインに黒枠を二重にして木版画「土塀」23-1の完成となりました。
作品「JOINT」②のまとめ
・・・抽象版画作品「土塀」シリーズ作品で質問の多い事項で、粒々のマチエールを作る方法と、
築地塀柄と中央の交差部分の黒い膜の表現方法について、詳しく説明してあります。
版木を分解して彫り、組み合わせた版木を合体した形で摺る方法など、参考になれば幸いです。
本記事の版画作品「土塀」は、来る伍人展(愛知県美術館8F・J2:2023/6/7~6/11)に展示予定です。
ご高覧頂ければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。