・・・11月中旬、徳川美術館で観覧した後、隣接の徳川園に入園しました。
今年は例年に比べ、秋口は温かくて紅葉には少し早いようでしたが、
豊かな自然と歴史に囲まれた徳川園の状況を記事にしました。
同園の歴史、園内にある滝、それを流れる小川のせせらぎを聞きながら龍仙湖のある大名庭園、
黒門など文化財の建物・工作物、そして四季を彩る草花など、参考になる事がございましたら幸いです。
徳川園の歴史
徳川園は、徳川御三家筆頭である、尾張藩二代藩主光友が、元禄8年(1695年)に自らの造営による隠居所である大曽根屋敷に移り住んだことを起源としています。
当時の敷地は約13万坪(約44ha)の広大さで、庭園内の泉水には16挺立の舟を浮かべたと言われています。
光友の没後、この地は尾張藩家老職の成瀬、石河、渡邊三家に譲られましたが、明治22年(1889年)からは尾張徳川家の邸宅となりました。
昭和6年(1931年)、十九代当主義親から邸宅と庭園の寄付を受けた名古屋市は整備改修を行い、翌年「徳川園」が公開されました。
昭和20年(1945年)に大空襲により園内の大部分を焼失した後は一般的な公園として利用されてきましたが、
平成16年秋に日本庭園としてリニューアルしました。
徳川園の概要
池泉回遊式の日本庭園
・・・徳川園(2.3ha・約7,000坪)は、池泉回遊式の日本庭園で、江戸時代の主だった大名庭園もこの様式です。
清流が滝から渓谷を下り海に見立てた池へと流れるありさまは、日本の自然景観を象徴的に凝縮しています。
高低差の大きな地形や既存の樹林をそのまま利用し、その中に武家社会の豪快さを象徴するような巨石を用いた岩組みが配置されています。
新緑や紅葉、牡丹や花菖蒲の花々も四季を通じてお楽しみいただけます。(引用)。
*池泉回遊式の日本庭園
海に見立てた水面の周りに見どころを配する庭園。
黒松を背にして浮かぶ島々、巨石に懸かるもみじ、
水際を渡る飛び石、突き出す砂嘴、舟小屋のある渡し場などを巡りながら楽しむことが出来ます。(引用)。
登録有形文化財
・・・平成26年10月7日に登録有形文化財に下記のものが認定されました。
名称:徳川園黒門
種類:工作物
徳川園の西に開く黒塗りの木割(きわり=原木より製材)の太い薬医門。
旧尾張徳川家大曽根邸の表門として風格のある趣を持つ。
概要
概要:木造、瓦葺、間口3.6m、潜戸付、建設年代 明治32年(1899)。
木割の太い強固な趣を持つ*薬医門(=2本の本柱の背後に控柱を立て切妻屋根をかけた門)である。
*薬医門
基本は前方(外側)に2本、後ろ(内側)に2本の4本の柱で屋根を支えます。
特徴は、屋根の中心の棟が、前の柱と後ろの柱の中間(等距離)に位置せず、やや前方にくることです。
したがって前方の2本の柱が本柱として後方のものよりやや太く、加重を多く支える構造になります。
薬医門の裏軒に比べ、正面の軒下のスペースが広くなります。
屋根は切妻造の本瓦葺で軒は二軒(ふたのき)、疎垂木(まばらたるき=間隔がまばらの垂木)としています。
鬼板獅子口(=棟飾りの一つで棟の両端に置く鬼瓦のこと)棟瓦積で、
破風の拝み(おがみ=破風板の出会う最も高い部分)を*猪の目懸魚(いのめげぎょ=装飾板の下部がハート形)で飾っています。
猪の目懸魚(いのめげぎょ)
猪目(いのめ)とは、動物のイノシシの目、それを模してハート型とした刳(くり)抜き穴のことをいいます。
時代が古いほど魚の形に似て単純な形が多かったが、時代を経るごとに装飾の要素が強くなってきて華麗になりました。
猪目も「火除け」のまじないとして色々なところに施されています。
隅巴(すみともえ=切隅瓦の接点を覆う瓦)・軒巴(のきともえ)は三つ葉葵紋の瓦とし、
留蓋瓦(とめふたがわら=屋根末端の部分を覆う瓦)に亀をのせています。
妻側は*男梁(おうつばり・おばり)の両脇に*大瓶束(たいへいづか)を立ててあります。
男梁(おうつばり・おばり)
薬医門など冠木(かぶき)と水平方向で、垂直になる方向にある長い梁で柱に乗る格好になります。
この梁(男梁)の下に、女梁(めうつばり・めばり)が添えられる。
その上に虹梁(こうりょう=柱の頭部をつなぐ役目、化粧材でもある)を載せ*大瓶束(たいへいづか)が棟木を受けます。
大瓶束(たいへいづか)
大仏様では虹梁上に断面が円の円束を立てて母屋桁を支え,禅宗様では虹梁上に大瓶束と呼ばれる太い円束を立て並べて天井を張ります。
装飾は極めて謙虚で、繰形や絵様はつけておらず寺院の総門とは異なる豪壮な大名屋敷の様相を見せています。
名称:脇長屋(わきながや)
種類、建築物
黒門に隣接する入母屋造の建物。
黒門や塀と連続して旧尾張徳川家大曽根邸の面影を残す。
概要
黒門の南側に位置する。桁行19.6m、
梁間6.6mで入母屋造、桟瓦葺、鬼板棟瓦積で軒巴には六葉葵紋を見せる。
妻壁を木連(きつれ)格子(格子の内側に板を張ったもの)とする。
西面は連続する塀に合わせ、腰を下見板張、上部を白漆喰塗りとし、左右に武者窓(太い格子の窓)を付けている。
なお、北西角にも一段低い武者窓を付ける。
名称:塀(へい)
種類:工作物
徳川園の外周に位置する木造の塀。
創建時の姿を示し、周辺建物の歴史的景観を整えている。
概要
木造、瓦葺、総延長84m、潜戸付、建築年代 明治33年頃/平成16年改修
黒門脇の塀は桟瓦葺、下見板張である。黒門の両袖につき、
黒門の正面向かって右側には通用門を付け、左側は徳川園内にある蘇山荘の西入口まで伸びている。
西北傾斜地の塀は、桟瓦葺、縦板下見板張であり、階段状に3間幅で設置している。
釣瓶井戸(つるべいど)
種類:工作物
石造の井戸で木造切妻杉皮葺の屋形を持つ。
塀と同様に周辺建物の歴史的景観を整えている。
概要
石造、面積1.6㎡、屋形付、建築年代 明治33年頃。
釣瓶井戸は、脇長屋の東側に位置する。井桁は1.95m角の花崗岩製である。
釣瓶の高さは2.4mで、その支柱や腕木はなぐり仕上げとなっている。屋根は切妻で杉皮葺である。
蘇山荘(そざんそう)
種類、建築物
徳川園の北西に位置する。
伝統的な和風建築の様式をとりながらも中廊下や階高の高い和風の座敷などを採用する近代和風建築の好例。
概要
木造平屋建、瓦葺、建築面積147㎡、建設年代 昭和12年(1937)/昭和12年移築・平成16年改築
歴史
昭和12年に名古屋市は「名古屋汎太平洋平和博覧会」を開催し、その迎賓館として会場内に「和館」が建てられました。
この和館は、閉会後名古屋市に寄贈され、徳川園に移築されたのが蘇山荘です。
構造・構成
蘇山荘は木造平屋建、桟瓦葺で入母屋造であるが一部寄棟造となっています。
コの字型の平面構成で、かつての車寄せが突出しており、玄関から広間へ広い廊下が廻っています。
現在の平面構成は広間2室、次の間、玄関、個室、待合、パントリーとなっており、
かつての使用方法と変わっている部屋もありますが、部屋の形状はかつての姿をとどめています。
特徴
また、玄関の構え、玄関破風の懸魚、床飾り、付書院、襖などは、従来の和室の手法を取りながらも、
ガラス戸の採用、中廊下の設定、和室の座敷であるが階高を高くとり洋家具を意識した応接間などが見られることは、
江戸期の邸宅とは異なる近代的な和風建築(明治時代以降の日本風意匠を踏まえた建築様式)の特徴を見ることができます。
柱の仕様
主要材料は木曽檜で、かつての車寄せ部分の柱は心去材(樹芯を外した材)で檜の無地物(節がない)、
座敷廻りの柱も同様の無地物、縁廻りの柱は心持材、玄関腰板は檜の節板を使用し木曽檜の良質材を表した仕様となっています。
活用状況
なお、この建物は昭和22年(1947)から平成8年まで、名古屋市の公営結婚式場として使用され、
平成16年からは喫茶室として活用されています。
徳川園の四季、紹介ページ
・・・徳川園のページは、季節ごとに様々な顔を見せる「徳川園の四季」として、園内の木々や花々の様子を随時紹介しています。
紹介ページは「最近のフォトギャラリー」・「現在おすすめの花」・「花ごよみ」・「四季めぐり」の4パターンです。
参考までにそれぞれ一部を紹介します。
最近のフォトギャラリー
・・・師走の主な花として、14画面を紹介しています。この記事では、2画像を紹介します。
写真:白山木の実(更新日22-12-1)。
写真:過去の十二月上旬の様子 (ソテツの菰巻き)。
<その他の画像>
椿(西王母、関戸太朗庵、中部初雁、秋風楽ほか)、山茶花(八重、一重、白など)、
子福桜、寒牡丹(豊明、時雨雲など)、寒椿、キチジョウソウ、イソギクなど。
紅葉(イロハモミジ、ヤマモミジなど山側のみ12月上旬頃まで)
実(マンリョウ、センリョウ、マユミ、ハクサンボク、ミヤマシキミ、ヤブコウジ、ナンテンなど)。
現在おすすめの花
・・・現在おすすめの花や園内の様子は「徳川園公式Facebook」で取り上げ、紹介しています。
上記「徳川園公式Facebook」のコメントが興味深かったので紹介します。
ソテツのコモ巻き
初冬の準備、ソテツのコモ巻き。明日には作業が完了予定です。
松も同じようにコモ掛けしますが、害虫をコモへ誘導する作業です。ソテツは寒風除けを目的としています。
松のコモ掛け
松のコモ掛けは近年害虫より益虫(サシガメなど)が多く越冬すると言われており当園では、今年は行わない決定をしました。
松を害する毛虫をサシガメなどに駆除してもらう。自然(昆虫)の力を借りて樹木管理をする事も大事だと考えています。
*12月2日付初冬の準備、ソテツのコモ巻き。「徳川園公式Facebook」のコメント。
新春彩る「冬牡丹」
徳川園で1月2日「冬牡丹」の展示が始まった。
寒空の下、わらでかこわれた色とりどりの20種70鉢が大輪の花を咲かせ、新春の庭園を彩っている。
冬牡丹は、わらや温室で雪や霜を防ぐなど温度管理することで、本来春に開花する牡丹を人工的に早く咲かせる。
同園では毎年、ボタン生産量日本一の松江市・大根島から仕入れた花を展示している。
集ったのは、豊かな香りを持つ「黄冠」(おうかん)、絞りと呼ばれる紅白が入り交じった色合いが特徴の「島錦」など。
訪れる人はカメラを向けて楽しんでいた。
庭園買う売り責任者の鬼頭宏さん(44)は「花が少ない時期でも、一足早い春を感じてもらえば」と話す。
展示は、2月19日まで。鑑賞には入場料(一般350円など)が必要。(2023/1/4日、中日新聞)。
花ごよみ
・・・四季を通じて徳川園ではたくさんの花々が楽しめます。
その花々を季節ごとに「花ごよみ」として紹介しています。
本記事では、早春・春・夏・秋・冬の季節、それぞれ一部を紹介します。
早春
早春の花として、アセビ・アンズ・オウバイ・キブシ・ウメ・サンシュユ・シダレウメ・ジンチョウゲ・ダンコウバイ・ニホンスイセン・ツバキ・マンサク・ミツマタ・ユキヤナギなど。
写真:ツバキ。
春
春の花として、ボタン・アマドコモ・アヤメ・エゴノキ・エビネ・カキツバタ・サクラ・サワフタギ・シャクナゲ・シロヤマブキ・タニウツギ・ドウダンツツジ・ハクサンボク・ツツジ・ヒトツバタゴ(なんじゃもんじゃ)・フジ・ヤマブキ・山野草他。
夏
夏の花として、ハナショウブ・アジサイ・ギボウシ・クチナシ・コムラサキ・サルスベリ・シモツケ・ハマゴウ・ハマボウ・スイレン・ハス・ムクゲ・ヤブカンゾウ・ヤブミョウガ・ヤブラン・ワレモコウ・ユリなど
秋
秋の花として、ヒガンバナ・キキョウ・キンモクセイ・コムラサキ・サンシュユ(実)・シュウメイギク・センリョウ・タカノハススキ・ドウダンツツジ(紅葉)・タマスダレ・ツワブキ・ナンテン・ニシキギ(紅葉)・マルバシャリンバイ・ハクサンボク・ハギ・スイフヨウ・ホトトギス・モッコク・ヤブランなど。
冬
冬の花として、イソギク・キチジョウソウ・キッコウヒイラギ・寒椿・寒牡丹・コブクザクラ・サザンカ・ソヨゴ・タラヨウ・ヒサカキ・ツバキ・マユミ・マンリョウ・ミヤマシキミ・ヤブコウジ・ロウバイなど。
四季めぐり
・・・四季めぐり(春、夏、秋、冬)を作り直しました。
春・夏・秋・冬、いずれもPDK形式にてその画面を紹介します。
春
夏
秋
冬
季節ごとの花々などが場所と同時にわかるようになりました。
ご参考:徳川園の四季へ
その他
師走の徳川園だより
・・・令和4年も早いもので師走に入りました。本年の二十四節気「大雪(たいせつ)」は12月7日です。
いよいよ本格的に冬の気配が色濃くなりそうですね。
徳川園では冬支度として、ソテツのコモ巻きを伝統的な技法を再現し行っています。
モミジは大曽根の瀧や虎仙橋周辺など12月の上旬も紅葉を楽しめます(夜間開園は12/2~12/4)また、
12月13日に正月事始めである黒門へ「松飾り」を設置します。
12月17日(土)は、高校生の皆さん(旭丘高・明和高・金城学院高 出演順)による「クリスマスコンサート」を開催致します。
年末・年始
・・・年末年始は12/29~1/1まで休園日となり、
1月2日は、粗品として特製カレンダーと縁起アメを午前9時30分より先着200名様へプレゼント(3日火曜日は振替休園日)。
他にも1月2日は、愛知商業高等学校弓道部の皆さんによる「射初め式」を開催。
1月8日には、人気の縁起の良い伝統芸能「新春漫才」を開催致します。
申し込み方法
・・・お申し込み方法は「往復はがき」(1通で2名まで応募可)による応募となり、応募多数の場合は抽選(12/16消印有効)となります。
午前の部(11時~12時)、午後の部(14時~15時)各80名です。☆詳細はイベント情報をご確認下さい。
*「徳川園の冬牡丹」は1/2~2/19まで開催致します。
徳川園のまとめ
・・・徳川美術館を鑑賞した後、隣接の徳川園を散策しました。
樹々・滝・小川・湖・豊富な花々など、豊かな自然に囲まれ、四季の変化を感じられる施設です。
一年中楽しめる癒しの空間がありました。気分転換、リフレッシュに参考になれば幸いです。
最後までご覧いただき有り難うございました。