・・・親しい方から喪中のハガキが届き、年賀状を避けて翌年に寒中お見舞いを出した経験はありませんか。
又は何らかの理由で例年の年賀状を出せず、年を越してから寒中お見舞いを出す場合などあるかもしれません。
そんな時、手作りの木版画で寒中お見舞いを出す場合の作品作りの参考になれば幸いです。
寒中お見舞い、木版画作品。
・・・寒中お見舞い「冬景色」の木版画作品を紹介します。
今回は一つの作品がどのように変化するかトライしました。木版画制作の参考になれば幸いです。
木版画作品「冬景色」
・・・木版画作品「冬景色」が、雪質・冬空の表現・昼夜の別と変化するさまを、
それぞれに、ヒント・裏技・制作工程に順に分けて記載しました。
雪質(民家に積もった雪)
ヒント
民家に積もった雪の柔らかさの表現にトライ。
裏技
・・・版木にジェッソ・板ぼかし処理をし、十分にジェッソを乾かした後に使用します。
<ジェッソ処理>
作品画面手前の民家及び中央の家に積もる雪の厚さに該当する版木の部分に、ジェッソを塗り十分に乾かします。
<板ぼかし>
左下の民家の雪の版木部分には板ぼかしを施し、雪の角を柔らかく表現します。
制作工程
・・・基本的に絵具は薄めに溶かし、十分水気を切り使用します。(絵具はターコイスブルーとマリンブルーを使用)。
<絵具の状態>
絵具皿の縁でしごいた絵具を薄く塗り、積もる雪の透明感を表現します。
しごきが十分でない場合は、さらにタオルなどで水気を切ります。常に水切り用のタオルを用意します。
ごく薄く摺りますが、トーンを濃くしたいときは、絵具を濃くするのではなく、
2度摺(上げ摺)がおすすめです。透明水彩の効果で、奥行きも感じさせます。(下記写真を参照ください)。
<バレンの動き>
摺る時全体に余り圧を駆けない。特に最初の摺り始めのタッチを柔らかくしないとバレンの筋がついてしいます。
小学生の時使ったようなバレンでも構いません。潰しのきつくないバレンが適しています。
冬空の表現(晴れ・曇り・吹雪)
ヒント
・・・民家の背景にある空模様を変化させ、晴れ・曇り・吹雪などの表現にトライしました。
横殴りの風が吹き雪が舞う、そんなイメージを表現するため、空の表現を工夫します。
裏技(曇り空・晴れ日・吹雪の表現)
晴れ日
夜空は、薄く溶いた絵具を1度~2度摺ります。明るく晴れた日の夜、月明かりも連想させます。
曇り日
<夜空のトーンの調整>
薄く溶いた絵具を一度摺る。その後もう一回摺る(二度摺=上げ摺)、空が暗くなり曇り空を感じさせます。
いきなり濃い色を使うのは避けた方がベター、空の奥行きも感じさせる効果のある、2度摺をお勧めします。
吹雪の表現
・・・背景の空の状況で吹雪を表現してみました。試し刷りで調節された方がベターと思います。
試しに、絵具を継ぎ足しせず同じ筆で、続けて摺ってみてはいかがでしょうか(枯らし刷り)。
<一度摺>
激しい横殴りの蒙吹雪の感じが出ています。数枚摺ったうちの一枚です(偶然性もあります)。
<二度摺>
一度摺より弱めの吹雪に見舞われた感じが出ています。2度摺は、吹雪・曇り日にも応用できます。
制作工程
・・・基本絵具は薄めに溶かし、十分水気を切ります。
絵具の状態
絵具は薄めに溶き、絵具皿の縁でしごいた後、版木に満遍なく薄く塗ります。
筆は左右そして横横に動かしながら版木に塗り、積もる雪を表現します。
絵具のしごきが十分でない場合は、さらにタオルなどで水気を切ります。
筆の動き
<吹雪の表現>
左から右横に筆を走らせる場合版木の左側角に絵具が付きやすいので、ハガキ・和紙などでカバーします。
バレンの動き
<吹雪の表現>
更にバレンも横に往復させ移動しながら動かします。横に動かす時でもあまり強く圧をかけません。
仕上げ時に空の状態が薄いようでしたら、絵具を濃く摺るのではなく、二度刷り(上げ刷り)をお勧めします。
樹木の表現
<色>
黒のガッシュ(ランプブラック・ジェットブラックなど)を使用します。
<吹雪の表現>
樹木全体を満遍なく塗るのではなく、ところどころを塗り残します。
吹雪で背景の樹木も見えなくなるように演出します。
<住居>
住居は、基本しっかり摺ったほうが安定感があります。薄いようであれば二度刷り(上げ刷り)します。
昼夜の別(民家から漏れる灯り)
ヒント
・・・民家から漏れる灯りに変化を付け、夜・昼の表現にトライしました。
<夜>
夜は黄色系統、ただしレモンの単色は透明感ありすぎで人の気配を感じないので避けた方がベターです。
本作品「冬景色]の黄いろ系の灯りは、ネイプスイエローにジョーンブリアン(ガッシュ)を混ぜて使用しています。
<昼>
前述の黄色系統のベースに下記*黒の透明水彩を加えながらで調整します。
*黒の透明水彩:透明水彩の黒を別の皿に溶き、微量を混ぜながら調整しています。
<その他>
灯りにグラデーション・障子の桟を入れ灯りにチャレンジしましたが効果薄く今回は断念しました。
裏技
・・・民家の灯りの該当場所の版木に、夜(黄系統)に前述*黒を足しながら明るさを調整します。
当初、黄系統~橙系統を試しました。レモンの単色は透明感ありすぎで人の気配を感じないので避けました。
最終的に本作品「冬景色]の黄いろ系の灯りは、ネイプスイエローにジョーンブリアン(ガッシュ)に落ち着きました。
制作工程
・・・前述のごとく、民家から漏れる灯りにグラデーション・障子の桟を入れ灯りにトライしましたが効果薄く今回は断念しました。
民家の灯りを入れることで、寒い自然の中で人が協力しながら住んでいる感が伝わってきます。
絵具の状況
基本的に絵具は薄めに溶かし、十分水気を切ります。黄色系統のベースに黒を加えながら調整します。
ハガキの情報
今回の作品「冬景色」を制作するうえで白・鳥の子和紙などケント紙など色々試作しました。
結果ですが、100均の白のハガキが、空の背景に現れる板目と白い雪の表現に一番適していました。
その他
・・・作品完成の最終段階で、エディション・題名・サイン・落款を押すなどがあります。
落款を正確に押す方法
落款を押す場合、少しでも斜めになると折角の苦労が水の泡となり残念な結果となります。
ご存じかもしれませんが、落款を正確に押す方法を説明します。お役に立てば幸いです。
落款を正確に押す手順
その1.100均で購入した30cmの定規を用意し、作品の上に定規を載せます。
その2.定規の金の部分を右にし、定規のメモリを利用し、落款を押す位置を定めます。
その3.朱肉を付けた落款の下の部分を定規の金の上部1~2mmに当てピッタリの位置を探ります。
その4.定規の金の部分は3mmほどの高さがあります。そのまま真下に向け落款を押します。
日本料理屋さんのお酒の棚飾りに
・・・健康的な日本料理、お昼も人気の日本料理ランチを提供する「魚菜山ぐち」さん。
感謝を込め、お酒の棚に飾りました。もうすぐ節分ですので、季節的に「ひなまつり」も一緒に飾りました。
焼き魚と鰯フライをチョイス
本日の他のメニューは、刺身と焼き魚・刺身と鰯フライです。版画作品を入れ替える度に日本食を楽しみにしています。
おじさんには、栄養バランスの取れた健康的な日本料理がピッタリ!そして、やわらかめのご飯がいいんです。
寒中お見舞い、木版画作品のまとめ
・・・昨年親しい方から喪中のハガキが届きました。そこで、年を越してから”寒中お見舞い”を出すことにしました。
手作りの木版画で”寒中お見舞い”を出す場合、作品作りの参考になれば幸いです。
今回の自作の版画作品を飾らせて貰っている、なじみの日本料理屋さんを少し紹介しました。
小作品とはいえ日本の季節の移り変わり、それに伴う作品作りは勉強になっています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。