・・・SNSの仲間から「名古屋市民ギャラリー栄で企画展を開催」の情報を入手し、観賞しました。
今回の企画展は、ギャラリーを運営する名古屋市文化振興事業団が、
「次世代作家に光を当て新たな息吹を発信したい」と自ら手掛けた「次世代アーティスト企画展」でした。
第1回は、水上卓哉の世界イノチトハで「命の輝き」でした。
この記事が今後の創作活動の一助となれば幸いです。
名古屋市民ギャラリー「次世代アーティスト企画展」
次世代に伝えたい、未来への希望
・・・新型コロナウィルスの感染拡大以降、芸術活動の場は制約を受け人々の心の弾みが消えていきました。
だからこそ、希望の息を吹き返したい展覧会の構想を練っていた時に、水上さんの絵をふと思い出しました。
この夏のアートイベントで、彼は子供たちに海の生き物の水彩画を教えていました。
のびのび描く喜びを伝える彼の作品は、ダイナミックで繊細。まさに「命を伝える画家・水上卓哉」でした。
ギャラリーを運営する名古屋市民ギャラリー栄館長の宮田健(みやたけん)氏は語ります。[水上卓哉の世界~イノチトハ~要約]。
人はなぜ描くのだろう。
人はなぜ描くのだろう
人はなぜ描くのだろう、人はなぜ歌うのだろう、人はなぜ踊るのだろう。
描きたいから描く、歌いたいから歌う、踊りたいから踊るといった本能的な身体行動だろうか。
子供がそうであるように、喜びとしての初期行動はあるだろう。
しかし人間は成長する。他社との関係の中で描き、歌い、踊る、
そこには羞恥、主張、共感があり、描くこと、歌うこと、踊ることを人生とする者がいる。
水上卓哉さんは、描くことを人生とした。あるいは描くことを人生としなければならなかったのかもしれない。
私はそういう人生をどこかで羨んでいるのかも知れない。
障害は才能ではない、水上卓哉の才気。
障害と表現
画家杉本健吉さんは99歳まで画業を続けられた。作家としては羨ましがれる方だが、
84歳の時に利き手である右手を骨折し、左手による作品作りを余儀なくされた時代がある。
しばらくは養生を楽しむこともあったのだが、「描きたい」と言う衝動は煮詰まりかえるばかり、
とうとう左手で描き始めた、名を杉本左吉としている。
大変好評で、私も大好きな作品シリーズとなっている。
障害は、絵を描くという作業性において大きなハンデキャップであるが、大きな特性でもあって、
望んで得られるものではない。また望むべきものでもない。
特性を力に換えるものは、創作への果てしない欲望である。
障害があるから良い作品が生まれるわけでは決してない。
不運にも背負った障害が、だからこそあの生命力ある造形造詣が生まれたと述べるわけではなく、
さりとて無関係と述べるわけでもない。私たちが優れた造形作品を観るとき、
作者の人生から解放されることを願うが、不可解な事でもある。
ただ本来作品と作者の人生とは別の価値を有していることを肝に命じて作品を楽しみたいと考える。
以上、高北幸矢氏著、[水上卓哉の世界~イノチトハ~より]。
水上卓哉の世界「イノチトハ」
名古屋城写生大会景勝保存協会賞
・・・5歳から近所のお絵描き教室の谷口先生のところへ通っていました。
毎年ゴールデンウイークの名古屋城景勝保存協会の写生大会は家族5人で参加する我が家の年中行事で、
6年生の時に私は、協会長賞を(1等賞)をいただきました。
交通事故後、再度協会長賞作品
・・・しかしその後の交通事故で私の人生は大きく変わりました。
今までできていたことが何もできなくなってしまったのです。
ここに通っていたことを思い出すだけでも良いからと母は言い、
リハビリの一環としてお絵描き教室に再び通い始めました。
いままで書いていたものならかけるかもしれない、と事故から1年後、
名古屋城写生大会に参加しましたが思うようにかけず、
疲れて仕上げることが出来ませんでした。
その次の年、事故から2年後の再チャレンジで再度協会長賞をいただいたのがこの作品です。
「私には絵が残っていた!」と感じた瞬間でした。(作家コメント)。
命の輝き、原動力
・・・水上卓哉さんは12歳の時に車にはねられ、今も後遺症と向き合う生活です。
左半身のまひや高次脳機能障害がありながら、全国公募のシェル美術賞、
FACE損保ジャパン日本興亜美術賞と相次いで入選。
2019年春、推挙されて現代美術家協会の会員となりました。
再度の挑戦に加えて諦めない不屈の努力で成し遂げた成功体験でした。
此の成功体験は、これからも経験する困難に立ち向かう強い味方になると確信します。
名古屋城は作家のRootsに相応しい作品です。以後部門別の水上さんの作品の一部を紹介します。
水上卓哉さんの作品紹介
・・・作品はたくましい線と筆を遣い、豊かな色彩が特徴、強いエネルギーを感じさせます。
「確固たる作風。もはや障害を語る必要はない」と現代美術家協会の作家たちの評です。
この小さな世界
ひとつのいのち・再生(せみ)
自分の眼差しが自分だけのものかもしれないと思うようになったのはこの蝉の顔を描いた時でした。
教授から、「あなただけの眼差しを大事に…。」と言われたのがうれしくて心にとめてモチーフを探すようになりました。
何を見て感動するのか自分自身を見つめるとそこにあったのは何かの境目にあるもの・・・。
境目を自由に行き来する物・・・。命のすれすれを生きるちいさな生き物たちの姿だったのです。(作家コメント)。
またここで会おう
一瞬、私は・・・ここで時空を超えて会いたい人に会える場所だ。と、感じました。
以降私は、蓮池の作品には「またここで会おう」とタイトルをつけています。
今は亡き大好きな祖母にも、未来のお嫁さんにも、
ここでなら会える気がするのです。(作家コメント)。
The thread of life
たとえこの先、地球が過酷な環境になったとしても、命は脈々と受け継がれていってほしい。
つながって欲しい。英語ならどう表現するのだろうか・・・。といろいろ調べてみました。
The thread of life=”いのちの糸がつながる”という意味です。(作家コメント)。
地球の手紙(泥火山)
“Oneness”=一つであること。動物も花も虫も、人もたった一つの地球に生きるたった一つの命に過ぎない。
人間だけが採りすぎたり使いすぎたりしていないか。
”200年後(7代先)の子孫のために美しい地球を残すには私たちは何をすべきか”
という視点はその後の私の物事の判断基準となりました。(作家コメント)。
希望の地球(ほし)
ーカバの楽園ー
-不死鳥ー
-フラミンゴー
地球に暮らす私達や動物、植物などが絶滅することなく暮らしていける環境とは何だろう。
東山動物園に行くと、私が思いつく動物たちはどれも絶滅危惧種に指定されていました。
とても驚き、これは私もいま伝えていかないと…、と描き始めました。(作家コメント)。
Drawing
大学院の授業で、50枚のポストカードドローイングをしました。
そのうちに自作の紅茶インクと葦ペンの相性が最高に楽しいことに気づきました。
ドローイングはモチーフを選ぶのも楽しいです。また気楽に追及することが出来ます。
そしていろんな実験や出会いがその時生まれて私の制作が広がっていくのを実感できるのです。(作家コメント)。
Roots
その1.
水上さんがかって団員だった名古屋少年少女合唱団。
その2.
事故から2年後の再チャレンジで再度協会長賞受賞作品。
その3.
東日本大震災の被災地の皆さんを励ましたいと描いた作品。
私の絵を見る人が優しい心になって世界が平和になること、
それが私の夢なのです(作家コメント)。
催しもの
会場では会期中、随時ドローイングを実演制作が行われました。
又、9/17日pm4:00から水上さんの妹の恵理さんがボーカルを務める音楽ユニットのライブ、
そして水上さんがかって団員だった名古屋少年少女合唱団によるコンサートも催されました。
プロフィール
- 出身:1990年名古屋市生まれ。
- 画暦:京都造形芸術(現京都芸術)大学 大学院芸術研究科 芸術環境専攻(通信教育)修士課程修了。
- 所属:現代美術協会会員、愛知芸術文化協会ANET会員。
- 個展:名古屋市民ギャラリー栄次世代アーティスト企画展「水上卓哉の世界~イノチハ~」他13回。
その(1)個展
・・・近々の個展を紹介します。
「楽園」第3回 水上卓哉 絵画展(三越名古屋栄)
- 開催場所:三越名古屋栄。
- 開催期間:2022/10/19~10/25。
- 開催時間:AM10:00~PM8:00。
- 作家在廊:会期中正午~PM5:00。
展示作品(一部紹介)
「芙蓉」
アトリエの近くの線路わきに鮮やかに咲く芙蓉です。
柔らかい花びらの筋がとてもきれいだったのを記憶しています。
「変幻」
東山動物園に行くと絶滅危惧種の多さに驚く。
動く寅の気配までそのまま表現した躍動感あふれる作品。
「希望の地球(ほし)・ホンドタヌキ」
水飲み場にいるホンドタヌキの家族。
こんなにかわいい目をしているのに昔の人はなぜ人間を化かすなんて考えたんだろう。
「希望の地球(ほし)・ニワトリ」
奈良の養鶏場に遊びに行った。平飼の鶏舎に入ると興味津々で近寄ってきて靴をつつく、
ちょっと恐竜に似ているな4.生まれたての卵は温かいのです。
「百合」
大輪の百合をいただきアトリエに飾るといい香りに包まれる。
堂々と咲き誇る百合に感動して制作した。(以上、「楽園」第3回水上卓哉絵画展パンフレットより)。
三越 名古屋栄画廊
その他(2)グループ展
・・・水上卓哉氏所属の美術団体「中部現展」の案内です。
第48回中部現展
- 開催場所:愛知県美術館ギャラリー8F。
- 開催期間:2022/11/29~12/4。
- 開催時間:AM10:00~PM6:00(最終日PM4:00)。
出展作品
<楽園~滝の拝>
<楽園~アルダプラゾウガメ~>
中部現展(2023/10/11~10/15)
愛知県美術館ギャラリーABC室
- 名古屋市東区東桜1丁目13-2。TEL052-971-5511
- アクセス:地下鉄東山線・栄。
- 開催時間: AM10:00~PM6:00.
- :00~PM5:00(最終日はPM4:00迄)。
出展作品
<奄美の風(ヒカゲヘゴ)>
<奄美の風(ヘゴの若芽)>
同時展示、会員展
奄美の風(フナンギョの滝)
名古屋市民ギャラリー「次世代アーティスト企画展」、まとめ
第1回企画展
・・・「水上卓哉の世界~イノチトハ~」が盛況のうちに(2022/9/13~9/18)開催されました。
大作も含めて150点が、名古屋市民ギャラリー栄8階の1フロアーに並びました。
市民ギャラリーを利用している観賞者としては大歓迎の企画展でした。
水上卓哉氏の生きる力
・・・32歳のアーティストの作品が並ぶ、壮大な迫力満点の個展でした。
とりわけ印象深かったのが「作品・名古屋城」!
交通事故を受傷する以前に描いた名古屋城の絵と事故後に描いた作品のコラボです。
受傷後、絶望感にさいなまれながらも筆を執り同じ名古屋城を描き「僕にはまだ絵がある」と奮い立った作品。
そして、今回の展示企画本「イノチトハ」に署名していただいた時、
不自由ながら丁寧に・必死に私の名前を書き抜く集中力に圧倒されました。
数々の挑戦と諦めない不屈の努力で事を成し遂げた体験者であることを肌で感じました。
本来、人間の根底にある生きる抜く姿にパワーをもらいした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。